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忍術千一夜

戦前、初歩的なカメラトリックを使った忍術映画を量産していたと言う大都映画作品。

若い頃の近衛十四郎、水川八重子と言う、松方弘樹、目黒祐樹兄弟の両親が共演している珍しい作品である。

一応、音楽やセリフが入っているが、本人たちの声かどうかは不明。

後で、別の男女が声だけ入れているようにも聞こえる。

話は他愛のない魔法ファンタジーのような物で、巻物を持った者は誰でも自由に忍術が使えると言う設定のドタバタ劇になっている。

とは言え、巻物と忍術の関係は曖昧で、必ずしも巻物を持ってなくても術が使えたりする。

一番分からないのは、主人公がかけた忍術で壺の中に入ったお春が、主人公の巻物がなくなったため出られなくなるシーン。

次のシーンでは何ごともなかったかのように主人公コンビと一緒に旅をしている。

ご都合主義の連続で、所詮はナンセンス劇と考えた方が良いだろう。

弥次喜多のようなバディ(相棒)ものでもあり、メガネをかけた、ちょっと森川信似のおとぼけ演技を見せているクモイ・サブローと言う役者とイケメン(とは言え、今風の美形と言う感じではなく、比較的整った顔立ちの好青年と言った雰囲気)近衛十四郎のアンバランスコンビが愉快。

この当時の近衛十四郎は、後のTVなどでお馴染みになったおじさん風貌ではなく、かなり若い。

当然ながら晩年の近衛十四郎の面影はあるのだが、松方弘樹、目黒祐樹兄弟にはあまり似ていない。

母親似なのかな?とも思うが、母親の水川八重子さんの方もきりっとした顔立ちで、松方弘樹、目黒祐樹兄弟の特長である甘いマスクとは印象が違っている。

それでも、今の目黒祐樹さんなどは、晩年のお父さんにそっくりになっているので、血のつながりとは不思議な物だと思う。

後半の見所は、剣劇の名人と言われた近衛十四郎のチャンバラシーンだが、さすがに戦後のリアルな立ち回りではない。

身体は良く動いているようだが、これも、チョコチョコとコマ落としのように動く感じの当時のフィルムでの見た目なのであまり信用出来ない。

歌舞伎の様式的な剣劇のようにも見え、本当に人を斬っているようには見えない。

やはり見せ物としてはトリック撮影で描かれる忍術の方だろう。

大半のトリックは二重露光で、姿が消えるのは、カメラを止めて、役者がいなくなってから、又カメラを回すと言う初歩的なトリック。

ただし、この作品では、姿が消えるのと同時に煙が立ち上ると言うお馴染みの技法に加え、バンッ!と言う爆発音が入っている。

ますます、後年の変身ヒーロー演出に近づいた感じ。

人間が煙になって、逆回転で壺の中に入ったり…と言うのは、まさしく西洋の魔法のイメージだろう。

切断された首が空中に浮かんでいると言うのは、首の下に黒い布を巻き、黒をバックに二重露光しているだけ。

ラスト、敵の城主が忍術で小さくなると言うシーンも、芝生を背景に二重露光しているだけなので、城主の周囲に置かれたマスク用の黒い布がテカって、巧く抜けておらず、バレていたりする。

それでも、当時としては、全編特撮だらけと言う印象だったに違いなく、子供も大人も無邪気に楽しめたのではないかと思う。

音楽も、当時流行っていたのであろう流行歌があちこちに使われており、お気楽な娯楽と言った感じになっている。

1時間足らずの中編で、今の大人が見るにはかなり単調な気もするが、子供向けと解釈すれば、それなりに楽しめる内容だとは思う。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1939年、大都映画、三品文雄原作+脚本、大伴竜三監督作品。

画面右から左へ、「忍術千一夜」と言う白の袋文字が書き順のように一文字ずつアニメで現れる。

谷川から周囲の山にカメラがパンして行く中、汝、志し立てて〜♪と詩吟のような声が重なる。

山道を、槍と甲冑の入った櫃を背負った2人の侍が都を目指して歩いていた。

穴山新八(近衛十四郎)と蜂の巣(クモイ・サブロー)と言うこの2人、同じ村出身の友人同士だった。

都まで後どのくらいだろう?と蜂の巣が聞くと、後、300里くらいだろう。都に出れば、仕官、出世、一国一城の主になれる!腕が鳴るぞ〜!などと穴山は答え、2人とも元気一杯だった。

数日後、都まで後どのくらいだろう?と蜂の巣が聞くと、後、200里くらいだろう。都に出れば、仕官、出世、一国一城の主になれる!腕が鳴るぞ~!と、又、穴山は元気に答えるが、何故か2人とも、もう槍も甲冑の櫃も背負っていない。

夕べの鍋焼き旨かったな〜と蜂の巣が行っている所を見ると、売って金に変えてしまったらしい。

更に数日後、都まで後どのくらいだろう?と蜂の巣が聞くと、後、100里くらいだろう。都に出れば、仕官、出世、一国一城の主になれる!腕が鳴るぞ~!と、又、穴山は答えるが、蜂の巣の方は相当へばっており、もうダメだ…、歩けないと言うと、道にへたり込んでしまう。

困った穴山が、蜂の巣を励ましていると、進行方向から近づいて来た不思議な一行に出会う。

何やら、男たちが抱えた輿に乗った奇妙な老人に、何人もの従者が従っている様子。

老人は、小汚い格好の行者のようにしか見えなかった。

穴山と蜂の巣が唖然と見送る中、不思議な一行は2人とすれ違い、トンネルの中に入って行く。

その不思議な行者は、とある城のデブ殿(大岡怪童)に招かれた山原老人(?)なる仙人であった。

お供のチビ助共々、デブ殿の前にやって来た仙人は、殿からせがまれ忍術を披露することになる。

臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前(りん びょう とう しゃ かい ちん れつ ざい ぜん)!と唱えながら、印を切って姿を消そうとする仙人だったが、一向に姿が消えない。

焦って何度かやってみるが、全然ダメなので、懐を探った仙人、巻物を落として来た!と横に控えていたチビ助に慌てたように言う。

その巻物を見つけて拾い上げたのが穴山新八。

開いて中を読んだ穴山は、それが忍術の虎の巻だと知り大喜び。

ようやく元気を取り戻した蜂の巣と肩を組んで旅を続けるが、途中、石川五右衛門ならぬ石川六右衛門と称する山賊に出会う。

身ぐるみ残さず置いて行け!と凄む山賊たちを前に、穴山と蜂の巣はおとなしく刀を差し出すが、巻物を見た六右衛門が、これは何だと聞いて来たので、はたと気づいた穴山新八、その巻物を取り上げると印を結び、これこれ小僧っ子たち!と言うと、あら不思議、むくつけき六右衛門の姿が子供に変身してしまう。

それを観て喜んだ蜂の巣が、今度は自分で印を結んでみると、突然、周囲に水が押し寄せて来る。

山賊共は押し流され、水が引くと、そこには大人に戻った六右衛門と穴山が背中合わせに座り込んでおり、口から水を噴き出している。

気がついた穴山が、蜂の巣、出て来いや〜!と呼ぶと、側にあった木が回転し、それが口に巻物をくわえて印を結んでいる蜂の巣の姿に変わる。

そんな2人の様子を、側の草むらから覗いていたのは、あの仙人とちび助だった。

巻物の威力を知った穴山と蜂の巣は、すっかり嬉しくなり、宿で酒を酌み交わすことにする。

2人は、互いに姿を消したり現れたりしながらはしゃいでいたが、それを障子の隙間から覗いていたのは、あの仙人とちび助だった。

仙人は、巻物返せ!と障子を開けて怒鳴りつけるが、その時、役人らしき物共が突然廊下を走って来たので、驚いた仙人とちび助は逃げ出す。

その直後、蜂の巣の部屋に入ってきた見知らぬ女が、匿って下さいと頼むので、蜂の巣はキセルを振りながら、穴山!と姿を消した相棒の名を呼ぶ。

すると、振ったキセルが肩肘付いて寝そべっていた穴山の頭を殴り、穴山は姿を現す。

その時、行ったん逃げたと思っていたあの仙人が役人たちを、この部屋だと思いますと穴山たちの部屋に連れて来る。

穴山は忍術を使い、女を煙に帰ると、床の間の壺の中に封じ込めたので、手配中の間諜の女が来なかったか?と言いながら役人が部屋に入ってきても怪しまれることはなかった。

しかし、部屋の中を役人が捜査しているどさくさに紛れ、チビ助が巻物を取り戻し仙人に渡すと、早々に宿から帰って行く。

役人たちが帰った後、女は壺から頭だけ出して外に出ようとするが出られないことに気づく。

穴山は慌てて印を結ぶが術が効かない!

その時、蜂の巣が、巻物がなくなっていることに気づくのだった。

一方、別の宿に泊まった仙人は、巻物を取り戻した弟子のチビ助を褒め、お前に忍術の極意を授けてやると言うと、まずは自ら姿を消してみせる。

次に、巻物をちび助に渡し、同じように姿を消させて見るが、元に戻らないと声が聞こえたので、噓の三八と言えと仙人は教える。

しかし、チビ助の姿は消えたままなので、23が6!などいくつかの呪文を唱えさせてみるが、姿が元に戻らないだけでなく、部屋が地震のように大揺れを始めると言う怪現象が起こる。

驚いた仙人は柱にしがみついて、22が4!24が8!などと、姿が戻る呪文をさらにチビ助に言わせてみる。

その内、何とか部屋の揺れがおさまり、目を回したチビ助の姿が出現する。

仙人は、褒美として巻物をちび助に渡すが、今の失敗で凝りたチビ助は、何だこんなもの!と言うと、ぽいと窓から外へ捨ててしまう。

それを拾ったのは、ちょうど下を通りかかった穴山と蜂の巣で、巻物が戻ったと大喜びする。

それを二階の部屋から見た仙人は、返せ!商売上がったりじゃないか!と怒鳴りつけるが、穴山は無視する。

すると、同行して来たあの女が、私にも見せて下さいよと巻物に興味を持ったようなので、慌てて穴山は懐の中にしまい込む。

3人が通り過ぎて行った後、二階から降りて来た仙人はその後を追おうとするが、宿の者に、宿賃を払って下さいとしがみつかれる。

穴山は、ちょっとその巻物を貸してくれとしつこく絡んで来た蜂の巣を女に変えてしまう。

蜂の巣本人の方は、近くの屋根の上に出現し、降ろしてくれと慌てるが、穴山は、あの人置いて来て良いの?と心配する女に、大丈夫、後から付いて来るよと笑って答える。

実際、すぐに、蜂の巣も2人に追いつき、3人は楽しく浜辺を歩いていた。

改めて女の名前を聞くと、お春(高原富士子)だと言うので、穴山と蜂の巣は、互いにお春を口説き始める。

穴山は忍術で花を出し、お春に渡すと、こっそり穴山から巻物を奪い取った蜂の巣も忍術を使い、その花を箒に変えてしまったので、2人とも私をバカにして!悔しい!と怒ったお花はさっさと行ってしまう。

浜辺に取り残された穴山と蜂の巣は、その後、醜い言い争いをするのであった。

やがて2人がやって来たのは関所だったが、田舎者の2人は旅に通行手形が必要なことも全く知らなかったため、そのまま素通りしようとし、役人に制止されると、忍術で抵抗し始める。

巻物を持った穴山は姿を消して難を逃れるが、姿を消せない蜂の巣の方はあっさり捕まってしまう。

しかし、姿を消した穴山が、役人たちに抱えられて牢に連れて行かれる途中の蜂の巣を役人に変えてしまい、蜂の巣本人の方は煙に変えて牢の中に吸い込まれる。

牢の中で姿を現した穴山は、外にいた役人に、ここは寒いからもっと上等な部屋に案内しろ!と文句を言うが、役人は怒って行ってしまう。

牢の中に自ら入った穴山は、寒がる蜂の巣の為に、畳や屏風、着物掛け、行灯など次々と家財道具を出してやり、終いには、酒と肴が乗った机まで出現させる。

そして、蜂の巣の頼まれ、女まで出して、牢の中を料亭のようにした2人は、酒を酌み交わしながら陽気に「東京音頭」の替え歌を歌を歌いだす。

城中に忍術を使うとんでもない浪人が出現したとの知らせを受けたデブ殿は、そのような男こそ戦の時には千人分の力になるのだ。すぐに手配を致せと命じ、穴山と蜂の巣を城の中に呼び寄せる。

デブ殿の前に出た穴山と蜂の巣は、互いの姓名を名乗り挨拶をする。

デブ殿が、その方たちの忍術を拝見致すぞと命じたので、穴山は印を切り、姿を消した蜂の巣は屏風の中に入り込む。

さらに、背後に控えていた大勢の家来たちを一瞬のうちに消してみせる。

さらに、デブ殿も消え、その席に穴山が出現したので、近くにいた家老は大慌て。

穴山を捕まえようとつかみ掛かると、又元のデブ殿に戻ったので、家老は恥をかく。

後ろに控えていた小姓も、いつの間にか蜂の巣に変わっていた。

すっかり、穴山の忍術に惚れ込んだデブ殿は、穴山と蜂の巣を1人300石で召し抱えると言い出す。

この事を知ったのが、間諜のお春で、同じく間諜としてデブ殿に仕えていた家臣に、あの2人は何かを企んでいるに違いありませんよと吹き込む。

すると、その家臣はお春に、頼みたいことがあると言い、その方の魅力で、あの2人をたぶらかせて欲しい頼む。

お春は、そんなことなら訳はございません。あの2人は共に甘そうな顔をしてましたから…と嘲る。

その頃、穴山と蜂の巣は、晴れて仕官の夢が叶い、立派な裃姿になり、城内の庭を散策していた。

すっかり浮かれ気分になっていた穴山は、女のことを言い出した蜂の巣の顔をバカにし、惚れられると言うのは、拙者のような顔を言うのだとうぬぼれてみせる。

その時、池の側で泣いている姫の姿を見つけたので、早速穴山が側に近づき、気安く話しかける。

姫は穴山を怪しむが、昨日召し抱えられた者ですと穴山が自己紹介すると、家臣の分際で頭が高い!下がれ!と姫(水川八重子)は叱りつけ、その場を立ち去って行く。

それを追いかけようとした穴山は、近づいて来た蜂の巣とぶつかってしまう。

姫が泣いていたのは、隣の藩の城主から一方的に求婚されていたからだった。

デブ殿は、姫を我が藩に下さった方が当国の為ですぞと、高飛車に結婚を申し込みに来た隣の城主に、当国では恋愛結婚しか認めん!と言って追い返す。

その後、泣きついて来た姫に、デブ殿は、心配致すな。あんなタニシのような奴にお前をやれるか!と慰める。

しかし、結婚を断られた隣国の城主は、国元に戻ると家来たちを集め、すぐに総攻撃の準備を命じる。

すると、隣国に間諜として潜り込んでいたあの家臣がそれを止め、城主の側に近づくと、パピプペ、パピプペ、パピプペポ〜♪と何事かを耳打ちする。

話を聞き終えた隣国の城主は、良きに計らえと答える。

その頃、穴山と蜂の巣は、暇を弄んで、城内の庭先で寝っころがっていた。

お春のことでも想っているのか?と蜂の巣がからかうと、噂していたそのお春が目の前に近づいて来たではないか。

すぐにそれに気づいた蜂の巣は喜び、立上がって近寄ると、とっても会いたかったわ!などとお世辞を言われる。

ふて寝していた穴山の方は、お春には興味なさそうに立上がると、先に帰るぞと言い、立ち去って行く。

蜂の巣はお春に、俺は忍術も使えるし、顔も満更じゃないだろう?などと迫りだす。

しかしお春は、男なんてあてにならないからね〜…と言い、忍術虎の巻を私に預けてくれたら信じてあげても良いわなどと答える。

すると、蜂の巣は浮かれ、拙者ほど純情な男は世の中にはおらんぞなどと言うだけなので、良いわよ!もう知らない!とヒスを起こしたお春は帰ろうとする。

さすがに焦った蜂の巣は、懐から巻物を取り出すと、持ってけと差し出す。

巻物を受け取ったお春は、その場にしゃがみ込むと、煙と共に姿を消してしまう。

驚いた蜂の巣だったが、その時、城から、召集の触れ太鼓が聞こえて来たので、他の家臣たち共々、急いでデブ殿の前に駈け付ける。

デブ殿が言うには、姫がさらわれたと言う。

いたずらにことを荒立てることはない!と家来たちに言い聞かせたデブ殿は、そちたちの忍術で助けてくれぬか?と穴山と蜂の巣に頼む。

早速承知した穴山がその場で印を結び消えようとするが術が効かない。

焦る穴山に、蜂の巣が耳打ちをする。

お春に巻物を渡してしまったと知った穴山は、ばかやろう!と蜂の巣を叱りつけると、急いで、隣国へと向かっていたお春を追いかける。

途中の山道で追いついた穴山と蜂の巣は、巻物を返してくれと頼んで捕まえようとするが、お春は忍術で姿を消してしまう。

巻物を敵に奪われたと悟った蜂の巣は、面目丸つぶれだ…と嘆く穴山を前に、俺がバカだった。お前の出世をめちゃめちゃにしてしまった。打つなり蹴るなり好きにしてくれと言い、その場に座り込む。

今更お前を殴っても始まらない…。今に何とかなるさ…と穴山が答えると、蜂の巣は着物の前をはだけ、いきなり腹を斬ろうとする。

驚いた穴山は刀を取り上げようとするが、人に迷惑をかけ、生きていれるか!と蜂の巣も抵抗する。

穴山はそんな蜂の巣に、お前とは一緒に国を出て苦労して来た仲だ。それがそんなことをされると、かえって恨めしく思うぞ…と言い聞かせ、蜂の巣も、穴山、すまん!と改めて詫びる。

もう変な気は起こさないでくれ。いつもの蜂の巣に戻ってくれよと笑いかける穴山だったが、そんな2人の話を聞いていたお春は姿を現すと、血も涙もない間諜商売の私だけれど。あんたたちの友情には敵わないよ。早くお姫様を助けてあげて下さいと言いながら、巻物を差し出して来る。

喜んだ穴山は、巻物を受け取ると、すぐに隣国へ向かおうとするが、その前に立ちふさがったのはあの仙人とちび助だった。

この巻物があなたの物だと言うことは知っている。きっと返すが、今しばらく貸しといてはもらえまいか?と穴山は仙人に頼むが、仙人は聞こうとしない。

仕方がないので、しつこくすがって来る仙人を殴ると、穴山と蜂の巣は忍術で姿を消してしまう。

怒った仙人は、その場に残っていたお春に、奴等はどこに行った?と問いつめるが、お春は、そんなことは知るもんか!ととぼける。

隣国の城の前にやって来た穴山は、まずはお前が行けと頼むが、蜂の巣が印を結んでも消えないので、あ、そうか!と思い出し、巻物を蜂の巣に渡す。

すると、効果覿面、蜂の巣の姿は消える。

城の中では、隣国の城主が、誘拐して来た姫を横に、わしはこれでなかなか女には優しくてな…などと言い寄っていた。

姫に酌をさせようと、盃を近づけようとすると、その盃が急に宙に飛び回り出したので、城主は驚く。

さらに、そっぽを向いている姫の手を握り、引き寄せた城主は、膝にしなだれかかったのが蜂の巣だと知り驚いて、小姓の刀を受け取ると、横に振り抜く。

庭先で待っていた穴山の横には、蜂の巣と身体が入れ替わった姫が出現する。

穴山は作戦成功と喜ぶが、場内では、その蜂の巣が城主から首を斬られ、空中に浮かんだ首が、穴山〜!助けてくれ〜!と叫んでいた。

その声を聞いた姫は、横でデレデレぐずぐずしていた穴山に助けに行ってお上げなさいと命じ、穴山も慌てて城の中に向かう。

身体から離れ、空中に浮かんでいた蜂の巣の首は、城主から斬られようとしていたが、その城主の腕を握って止めたのは、姿を現した穴山だった。

一方、庭に戻った蜂の巣は、穴山の奴はわしの弟子で、まだまだ未熟でござるよ…などと姫に法螺を吹き始める。

しかし、すぐに、穴山も側に出現、家来たちが一斉に襲いかかって来たので、穴山は姫と蜂の巣をその場から逃がし、自分は1人で斬り合いを始める。

穴山は姿を消したりしながら孤軍奮闘するが、姫は追って来た家来たちに捕まってしまう。

誰か来て〜!と姫が助けを求めると、その姫が次の瞬間には穴山に変身、城の中で戦い始める。

一方、長刀を持った腰元連中に護衛され、庭先に逃げ出していた城主は、何をしとる!捕まえんか!と腰元たちも追い払う。

そこに床几(しょうぎ)があったので、腰を降ろした城主だったが、いつの間にか、その床几は蜂の巣に入れ替わっており、椅子代わりにしゃがんでいた蜂の巣は、気がつかないで腰掛けている城主の足先を殴りつける。

驚いて城主が立上がると、蜂の巣は姿を消し、代わって出現した穴山が、扇子で城主の頭をこつんと叩くと、城主の身体は虫のように小さくなる。

その小さくなった城主を手で握って持ち上げた穴山は、側の池に向かって投げ捨てる。

空中で元の大きさに戻った城主は池に落ちてずぶぬれになる。

どうだ!参ったか!と穴山が声をかけると、さしもの城主も平謝りする。

悪いと気がついたら許してやる。姫はもらって行くぞ。二度と変な気を起こしたら承知せんぞ!と穴山は池の中の城主に念を押す。

その頃、お春は、仙人とちび助にずっと後を付いて来られ、こんなおじいちゃんについて来られるようじゃ、私もお終いだね…と嘆いていた。

そこに、姫を連れて帰って来た穴山が合流し、約束通り、巻物を仙人に返す。

受け取った仙人は、どこに行きます?と聞くチビ助に、山に帰ろう。もう都会はこりごりじゃ…と言うと姿を消してしまう。

随分探したんだよ、可愛いお春ちゃん!と蜂の巣はお春に言い寄り、穴山の方は、さ、姫、急ぎましょう!と言い、4人は、デブ殿が待ち受ける城へと帰るのだった。(「私の青空」の音楽が重なる)


 

 

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