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モダン怪談100,000,000円

2004年、地方の旧家の蔵の中から見つかったと言う、昭和初期に集められていたらしい16mmの短縮版劇映画コレクションの中の1本で、現在見られるのは11分ほどの長さのみ。

若い時代の斎藤達雄主演で、坂本武や吉川満子と言った当時お馴染みだった役者も登場している。

今見られるのは短い一部分だけとは言え、そのナンセンスな面白さは伝わって来る。

特に、国定忠治の幽霊を追っ払うのに、御用!御用!と十手を差し出すと逃げると言うアイデアなどはバカバカしくも面白い。

国定忠治が、寄らば、斬るぞ!と凄むのも、当時の時代劇のフレーズをパロっているのだろう。

山のシーンはロケ、寺の中はセットと言う構成で、登場する蛇などは本物である。

トリック撮影的な物はあまり使われてないが、穴の中に消える忠治などは二重露光で表現してある。

娘の父親が、読経の最中、木魚と間違えて、隣の女房の頭を叩いて怒られると言うのも、コメディエンヌではなく、普段はまじめな芝居をしている女優さんがやっているだけに面白さも格別である。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1929年、松竹キネマ、大森文雄原作、池田忠雄脚色、斎藤寅次郎監督作品。

恋人松田襄二(斎藤達雄)が貧乏であることから、結婚を許してもらえなかった娘の登美子(松井潤子)は、頑固な父親への置き手紙を残し、赤城山山中に松田と駆け落ちして来る。

2人で飯盒炊爨の準備していると、草の中から突然、怪し気な仙人のような老人(酒井啓之輔)が現れ、お前たちも金を掘りに来たんだろう!と怒鳴りつけたので、驚いて2人してその場から逃げ出す。

すると、麓から大勢の人間が登って来るのに出会う。

鍬を抱えたその中の一人に、何をしに行くのかと松田が聞くと、新聞記事を見せ、国定忠治の埋蔵金がこの辺りに埋っているらしいのでそれを探しに来たと言う。

見せられた記事には、その額「壱億円」と書かれているではないか!

それを観た松田は、僕も断然掘りますよ!金持ちになってお父さんを見返してやるんだ!と登美子に言うと、穴を掘り始めた連中に向かって、どこに埋っているんですか?と聞いてみる。

すると、バカ!それが分かっていたら、20年もこんなとこ、掘ってないよ!と怒鳴られてしまう。

その後、うろうろするうちに山道に迷ってしまった松田と登美子は、とある古寺の表にたどり着く。

中に入ると黒猫が通り過ぎたので、怯えた二人は抱き合うが、ふと見ると、棺が置いてあり、その前にお供え物の饅頭がたくさん置いてあるではないか。

あれを食べようかと登美子に同意を得た松田が、恐る恐る饅頭手を伸ばそうとすると、側に蛇がはっているのでビビる。

もう1度、勇気を振り絞って饅頭に手を伸ばそうとすると、横の棺のふたが少し浮き上がり、そこから出て来た死人の手が饅頭を摘んで引っ込むのが見えた。

怯えた松田と登美子は、天井から吊り下がっていた骸骨に気づかず、その前に立って抱き合うが、何となく互いに手をまさぐり合っているうちに、背後にあった骸骨の手を握ってしまう。

さらに、棺桶の蓋が開いたかと思うと、中に寝ていた死人、実は気がふれた女(二葉かほる)が起き上がる。

その頃、娘の手紙で駆け落ちを知った父大原邦造(坂本武)は、2人を捜しに赤城山中に探検服姿で1人乗り込んでいたが、彼も又、件の古寺に迷い込んでしまう。

中を見ると、棺桶を前に拝んでいる人物がいるではないか。

しかも、その人物が来ているのは娘の服に違いなかったので、思わず登美子だと思い駆け寄るが、振り向いた人物は額に三角巾を付けた狂女だったので、腰を抜かす。

それでも勇気を振り絞って、その服はどっから持って来た?と邦造が聞くと、昨日、新仏が持って来てくれたと狂女は言うではないか。

その頃、寺から逃げ出し道に迷っていた松田と登美子は、子供を背負った股旅姿の男がやって来て、そこに穴を掘り始めたのを目撃する。

国定忠治の幽霊じゃないか?と気づいた2人が近づくと、2人に気づいた国定忠治の幽霊(小倉繁)は刀を抜き、寄らば斬るぞ!と脅して来る。

思わずしゃがみ込んだ松田は、地面を無意識に引っ掻いているうちに、何かを掘り当てたことに気づく。

見るとそれは十手だったので、それを差し出しながら、御用!御用!と言ってみる。

すると、観念したのか、忠治の幽霊は、自ら掘っていた穴の中に入ると姿を消してしまう。

横でしゃがんでそれを観ていた子供が、勘太郎を忘れちゃ嫌だよ!と声をかける。

すると、穴の中から又忠治の幽霊が出て来て、勘太郎の幽霊(加藤精一)を背負うと、一緒に穴の中に入り消えて行く。

ここが忠治の埋蔵金の場所に違いないと踏んだ松田が、急いでその穴を掘り進めると、穴の中から、寄らば斬るぞ!と言う忠治の声が聞こえて来る。

松田はすぐに、十手を持って、穴の中に向かって、御用!御用!と呼んでみる。

すると、声が収まったので、十手を登美子に持たせ、松田が穴を掘り進めると、想像通り、小判が詰まった宝の箱が出て来る。

寺では、登美子の両親が坊さんを招いて、死んだと思い込んでいた登美子の葬儀を行っていた。

坊さんが読経する中、父親の邦造が木魚を叩こうとして、隣で拝んでいた妻のよし江(吉川満子)の頭を叩いてしまい睨まれる。

その時、窓から何かが飛び込んで来たので、怯えた邦造だったが、そこへ登美子が帰って来たので、それを観た両親と坊さんは腰を抜かしてしまう。

やがて、それが生きていた娘だと気づき、両親は喜ぶが、3人が抱き合っている所へ、重い箱を引きずって来たのが松田だった。

それを観た登美子が、お父さん、松田さん、大金持ちになったのよと教えると、邦造は、金さえ持っていれば結婚しても良いとあっさり許すのだった。


 

 

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