「モダン怪談100,000,000円」(1929)の翌年に公開された似たような趣向のナンセンス怪談のおそらく短縮版で、14分くらいしかない。 本作では、若き日の渡辺篤が主人公を演じている。 劇中で登場する骸骨などは、「モダン怪談100,000,000円」で使った小道具の使い回しのようだ。 「モダン怪談100,000,000円」で、子供の勘太郎を連れた忠治が登場するのは分かるが、本作で登場する石川五右衛門が、同じように子供連れと言うのが良く分からなかったので、ちょっと調べてみたら、自分の子供と一緒に釜ゆでになったと言う話が残っていた。 ではあの子は、五右衛門の実子と言う訳だったのか… 五右衛門とその実子が一緒に処刑されているのなら、その末裔などいるはずがないのに、吾郎と言う末裔が生きていた…と言うのが、またナンセンスになっているのだと言うことが分かった。 死んだ吾郎が着ていた、やけに裾が長い死に装束と言うのも意味が良く分からなかった。 ギャグとして、映画の中だけの衣装としてああ言う形にしたのか、それとも、戦前、ああ言う死に装束を着せていたのか? 色々、今とは違った昔の風習が映画で見られるのも、また興味深い。 現存する映像だけ見た印象だと、ドタバタが多い割りに笑える箇所は少ないように感じる。 バスの後部にへばりついて、ただ乗りしようとする辺りがバカバカしいくらいか? 墓の中で色々吾郎がポーズを変えて、居心地が悪そうなのも、まだ死に切っていないと言う風にも取れるし、ラストも、娘も結局死んで、死人同士として冥土で結ばれたと言うことなのか、それとも娘と吾郎は結ばれて生き返ったと解釈すべきなのか、ちょっと分かり難い部分もある。 釜の中に再び飛び込もうとした吾郎を、父親と坊さんが慌てて持ち上げようと足を持った所を見ると、生き返ったと言うことなのだろう。 持つ足があったのだから… |
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼ |
1930年、松竹キネマ、絹川秀治原作、池田忠雄+伏見晁脚色、斎藤寅次郎監督作品。 第一篇 娘を捜しに家の前に出て来た父親は、石川吾郎(渡辺篤)が持って来た大きな釜の横の路地で昼間からいちゃついていた吾郎と娘を見つけ、表に呼びだして叱りつける。 吾郎は、僕の財産はこの釜しかありませんと父親に説明すると、父親から呆れられる。 結婚の許しが得られそうもないと知った吾郎と娘は駆け落ちしようと計画するが、その計画を知った父親が、夜、沼のほとりの柳の下で娘を待っていた吾郎の背後から近づき、後頭部を殴りつけると、そのまま吾郎の身体を沼に放り込んでしまう。 吾郎の死体はすぐ発見され、恋人の死を知った娘は葬儀の席で嘆き哀しむ。 草木も眠る丑三つ時… 葬式帰りの1人の酔っぱらいが墓地の側にやって来ると、人魂が飛んでいるのが見えたので怯える。 墓の下では、どうにも狭い空間に居心地が悪い吾郎が、あれこれ姿勢を変えながらもがいていたが、地上では卒塔婆が揺れだし、その下から白い煙が立ち上って来たので、酔っぱらいは腰を抜かす。 その直後、墓の下から吾郎が這い出して来る。 肝を潰した酔っぱらいが逃げ去ると、地上に出て来た吾郎は、酔っぱらいが落として行った折り詰めの赤飯を見つけそれを夢中で食べ始めると、同じく酔っぱらいが落として行った酒も飲みながら家へと戻ろうとする。 バス停にやって来た吾郎は、出発しようとしていたバスの後方に向かうと、バスの後部にしがみつき、その窓にへばりついた不気味な姿は乗客たちにも見えてしまう。 それを観た乗客たちや運転手はパニック状態になり、バスは道路脇の電柱に衝突して停まってしまう。 吾郎は止まったバスの屋根の上を歩き前に向かうと、やがて、恋人だった娘の自宅にたどり着く。 娘は蚊帳の中で既に寝ていたので、蚊帳の外から手を伸ばし、中に置いてあった水差しの水を飲もうとしていたが、娘が急に寝返ったので、驚いた吾郎の幽霊は思わず水差しを畳に落としてしまう。 そのもの音で目覚めた娘は、枕元に立っていた吾郎の幽霊に気づき悲鳴をあげる。 それを聞きつけた父親も飛び起き、日本刀を手に取ると、娘の寝室に駆けつけて来る。 すると、部屋の隅に立ったが遺骨の後ろに吾郎の幽霊が立っているのを発見する。 父親に気づいた吾郎は、成仏するから娘を寄越せと要求を言うが、怒った父親は日本刀を振りかざして来る。 第一篇 終 第二篇 父親は、娘の寝室に現れた吾郎の幽霊を斬ろうと、日本刀を振り回していたが、逃げ回っていた吾郎は、部屋の中で見つけた長刀を手にすると、それで応戦し始める。 しかし、父親の頑固さには敵わず、吾郎は退散する。 その後、シャベルを持って墓場に戻って来た吾郎は、自分で墓を掘り始めると自ら合掌して、その穴の中に入るが、それを外に引きずり出した者があった。 早まったことをするな!短気は損気!と吾郎に説教しだしたのは、先祖の石川五右衛門だと言う。 自分が五右衛門の末裔であることを知った吾郎は考え直すことにする。 その頃、娘は寝込んでしまい、父親が必死に看病していた。 父親は、娘が丑の刻参りをする幻影を見てしまう。 その時、仏壇の小さな仏樣が倒れたので、父親は日本刀を持って室内を警戒する。 続いて、木魚が転がり始め、土間に置いてあった大きな釜の木蓋がまっ二つに裂けて、落ちる。 その釜の中から、子供(青木富夫)を抱えた石川五右衛門が出現、部屋にガマガエルや蛇が這い回る。 それを見た父親はさすがに怯えるが、その父の持っていた日本刀を取り上げた子供は、玩具の刀ようにグニャグニャに曲げてしまう。 五右衛門は父親に、良くも五郎を酷い目に遭わせてくれたな!と怒鳴りつけるが、側で寝込んでいた娘の美貌を見るとにやりとしてしまう。 子供から呼びかけられ、我に帰った五右衛門は、わしの末裔を不服だと言うのか!と父親に怒鳴りつけ、娘の身体を抱きかかえると、確かにもらって行く。返して欲しかったら、俺の法事をしろ!と命じる。 その時、子供は仏壇の前に供えてあった饅頭を喰いながら戻って来て、2人は元の釜の中に入ると消えて行く。 その後、父親は、言われた通りに、「石川五右衛門339回忌法事」を執り行う。 すると、大きな釜の中から、日本髪にウエディングドレス姿の娘と、モーニングを着た吾郎が出て来る。 娘は、もう良いのよ、お父さんと呼びかけると、もう私たち、結婚したのと嬉しそうに報告する。 すると、釜の中から、わしは満足じゃ~!と声が聞こえて来たので、それを聞いた吾郎は、思わず、ご先祖様~!と呼びかけながら、又釜の中に頭から飛び込もうとしたので、坊さんと父親が慌てて、吾郎の足を持ち上げようとする。 |