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五郎正宗孝子伝

何せ古い戦前の無声映画であり、内容に関する予備知識もなく、部分部分に唐突に出て来て、読む間もなく消える字幕もアールデコ調と言うのか、洒落てはいるが、ぱっと見、読み難い書体である上に、今では使わないような言葉遣いなので、その意味も良く理解しがたい。

出ている役者たちは、皆同じようなメイクをしている上に、歌舞伎同様、女役も男が演じているようで、画面が変わっても誰だが誰だか見分けがつかない。

これで、今、話を理解しろと言う方が無理で、何となく、幼い頃、継子苛めに苦しみながらも刀鍛冶になった少年が、その刀を楠木正也に献上しに行った際、屋敷内に妖怪が出願し、それを自ら打った名刀で退治した…と言うような話らしい…とおぼろげに理解する程度。

下のあらすじは、ネット検索で、色々参考になりそうな文章を拾って来て、おそらくこういう展開だったのだろう…と想像を書いたものに過ぎない。

あちこちに勘違い、間違いもあるのではないかと思う。

特に女性キャラの区別が付きにくいので、冒頭に登場し、五郎の父親行光と夫婦になるのが、後に五郎を虐めるお秋なのではないかと思うが、これも正直自信がない。

京で行光から小刀を受け取ったのは、悪酔いした行光を介抱してやった侍女であり、その侍女が生んだのが五郎と言うことなのだろうか?

崖から身投げしようとした五郎を助けた夫婦ものとその舅は、物語前半に出て来た誰かと言うことなのか?

それとも、この場面だけに登場した通りすがりの人なのか?その辺も良く分からない。

後半、屋敷内に入り込んだ女人が、急に髪の毛ぼさぼさで隈取り風の妖怪顔に変身したり、森の中で宙づりになったりするシーンがトリックと言えばトリック撮影だが、カメラを止めて行う初歩的な仕掛けだろう。

無声映画だけに、全体的に役者たちはオーバーアクトと言うか、大げさな身振り手振りでパントマイム表現しているように見える。

五郎を演じている子役は、なかなかこのパントマイム芝居が巧い。

主役らしき沢村四郎五郎と言う役者が、この子役なのか、父親の行光の方なのかすらはっきりしないもどかしさはあるが、パントマイムだけでも、何となくストーリーの流れだけはうっすらと分かると言うことを知った。

▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼

1915年、天活、桂田阿彌笠脚本、吉野二郎監督作品。

茶店のような縁台にやって来る年輩の男とその娘らしき2人

その2人を出迎え、刀を披露する刀鍛冶のような男、行光

娘お秋(?)は一目でその行光に惚れた様子

行光はそのお秋を娶ることになる。

行光は舅の世話によって京に出立することになる。

行光は御番になり、館で酒を振る舞われる。

行光は慣れぬ酒に酔ってしまい、体調を崩すが、それをかいがいしく介抱してくれたのは、屋敷の美しき侍女であった。

行光は、後日、この女に自分が作った小刀を手渡す。

この女、妊って出産後、産後の肥立ちが悪かったのか体調が悪化。

赤ん坊と共に見守る両親の前で病床に伏していた女は、布団の下に隠しておいた短刀を出して親に見せる。

どうやら、遺言として、その小刀父こそ、赤ん坊の父親の作である事を打ち明けた模様。

娘の死後、少し成長した赤ん坊五郎と共に、巡礼の旅に出た父親だったが、途中、病に倒れ、五郎に短刀を渡すと、母親の遺言を話す。

そこに通りかかった桶屋の主人は、父親に薬を飲ますと、五郎を自分が預かることになる。

その後、桶屋の息子として育てられることになった五郎は、大変なわんぱくで、近くの刀鍛冶の家に行くと、外から窓の中を覗き込んで、刀匠たちをからかう。

怒った刀匠たちが表に出ると、五郎は側に木に登って身を隠している。

しかし、刀匠たちは、何度も窓から茶々を入れて来る五郎に怒り、表に出て殴る蹴るの暴行を加える。

そこにやって来た行光は、虐められている子を自分の息子とも気づかず、弟子たちをなだめると、口先だけの子供だと思い、戯れに五郎に刀を打たせてみる。

すると子供ながら見事に打ってみせるので、その才能に驚いた行光は桶屋に行くと金を払い、五郎を自分の内弟子にすることにする。

行光はある日五郎に肩たたきなどさせていたが、五郎が母の形見として遺した小刀を差し出し、母親が死ぬ間際、この刀こそ父親の作った刀だと言い残したことを教える。

それを聞いた行光は仰天する、その刀は、昔自分が情を交わした娘に京で渡したものだったからだ。

とすると、目の前にいる五郎は自分の実子であると言おうことだ。

行光はひしと我が息子五郎を抱きしめ親子の名乗りを上げる。

そんな2人の様子を、襖越しに覗いていたのは、女房のお秋。

お秋は、自分との間に生まれた長男がありながら、夫が引き入れた別の女に生ませた五郎の事を憎むようになる。

お秋は、台所の上がりがまちの板をわざと外しておき、そこに五郎を呼んで、話しかける振りをしてわざと外れた板の方に突き飛ばす。

五郎は、外れた板の間に足を挟まれ怪我をしてしまう。

そこにやって来た行光は、五郎が怪我をしていることに気づき手当をしてやりながら、母親がやったと聞くと逆上し、お秋に文句を言いに行こうとするが、五郎が父の足にしがみつき必死にそれを止める。

その後もお秋の折檻は執拗に続き、体調を崩し、寝込むようになってからも、茶を持って来た五郎のお盆をわざとこぼし、棒で、何の落ち度もない五郎を叩き据える。

度重なる義母の折檻は、自分に否があるを感じた五郎は、真冬の雪の中、自ら外に出て井戸の所に来ると、上着を脱ぎ、井戸に合掌しながら、水垢離を始める。

やがて、体力が尽きた五郎は雪の中に倒れ込む。

寝ていた父親行光は、開いていた窓を閉め、布団の中に戻ろうとするが、何かを感じ雪の降る外へ出て行く。

少し歩き始めると、倒れていた五郎に躓いたので、驚いて助け起こすが、五郎は、驚き制止する行光を突き飛ばし、又井戸水で水垢離を始めようとする。

五郎の行為の意味を悟った行光は、不憫な我が子を抱きしめ、親子共々泣き出すのだった。

その後、丹前を着せ、五郎をおぶって家の中に戻る行光だったが、お秋の継子苛めはその後も続いた。

行光は、そんなお秋に手を上げようとするが、それを五郎がなだめ、お秋は自分の生んだ長男ばかりを可愛がる。

ある日、泣きながら家の外に出て来た五郎は、山に来ると、合掌して崖から身投げしようとしていた。

そこに通りかかったのが夫婦者で、五郎を抱きとめると訳を聞き、自分の家に連れて帰る。

その後、そのことを聞いた行光は夫婦者の家に五郎を引き取りに出かけるが、夫婦者は、子供をこんなにまで追い込むとはどう言うことか!とこんこんと説教する。

そこに帰って来て話を聞いていたのが、夫婦者の舅で、義憤に狩られたのか、五郎の義母を手打ちにしてやる!といきり立ち、その場でたすき掛けなど始める。

それを観た五郎は驚き、一足先に自宅に駈け戻り、義母に逃げるよう伝える。

そこにやって来たのが、件の舅で、刀を抜いて義母に斬り掛かって来る。

驚いたお秋は、外に逃げだすが、舅もそれを追って来る。

五郎は、襲撃された義母を守ろうと抱きつき、舅は誤って五郎に斬りつけてしまう。

舅は自らの失態に狼狽し、その場に腰を抜かすように座り込む。

お秋は、自らの浅ましさと、そんな自分を守ろうとしてくれた五郎への詫びの気持ちで、舅の刀を奪い取ると、その場で自害しようとするが、駆けつけて来た行光と夫婦者に止められる。

お秋は、今までの自分の愚かな嫉妬心を心から反省し、五郎に詫びるのだった。

その後、刀工としてめきめきと頭角を現しだした五郎の噂を聞いた楠木正成の使者が行光の家を訪れる。

それから5ヶ年経過…

五郎は、父親行光と共に、正成公より依頼の刀を打っていた。

外の井戸では、お秋が密かに成功を祈りながら水垢離していた。

仕事を終え、表に出た行光と五郎は、水垢離をしていたお秋に気づき介抱する。

ようやく完成した名刀を持って、五郎親子は楠木正成に会いに行く。

献上された刀を観た楠木正成はたいそう喜ぶ。

そんな楠木正成の館に、怪し気な女人が庭先から上がり込んで来る。

女人は、廊下に上がり込むと、突如、恐ろしい妖怪の姿になり、長刀を持って駆けつけて来た腰元たちと戦い始める。

それに気づいた五郎も、子供ながら立ち向かい、山に逃げ込んだ妖怪を追って行く。

妖怪は、五郎を掴むと空中に飛び立って行くが、駆けつけた加勢の者たちと共に討ち倒す。

どうやら妖怪は、怪鳥の変化のようだった。

楠木正成もやって来て、五郎の手柄を褒め讃えるのだった。


 

 

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