幻想館

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三つ首塔

1977年、毎日放送+東宝、岡本克己脚本、出目昌伸監督。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

リルケの研究等で知られるドイツ文学者、上杉誠也教授(佐分利信)の還暦パーティが行われた東京都内のとあるホテル。

教授の妻の妹の娘、音弥(真野響子)から赤いちゃんちゃんこを着せてもらった教授が主席者たちを前に挨拶をする。

その頃、同じホテル内から、探偵の岩下三五郎が、金田一耕助(古谷一行)に、今、二人の依頼人から同じ人物の調査を依頼されているのだが、それを互いの依頼人には黙って、料金の二重取りをしているのだと、自慢げな電話をしていた。

パーティ会場では、上杉教授の弟で、闇屋稼業で稼いでいる佐竹建彦(米倉斉加年)が、兄へのプレゼントと称して、いきなり、肌も露な二人の女性のエロティックダンスを披露し出す。

大学関係者がほとんどだった客たちは、あまりの場違いで下品な出し物に顔を背けるが、当の教授は、ややぶ然としながらも建彦に礼を言う。

それが、どうやら、偽悪家の建彦には物足りなかったらしい。

しかし、音弥は、その場の雰囲気に耐えられず、思わず、部屋を出て廊下を彷徨っている内に、突然目の前に、見知らぬ青年が立ちふさがる。

その青年の強い視線に言い知れぬ恐怖を感じた音弥は、思わず、その場を逃げ出すが、その際、髪飾りに使っていたくちなしの花を落としてしまう。

その頃、パーティ会場では、エロティックダンスを踊っていたダンサーの一人が倒れる。

彼女は、事前に、何者かから送られていたチョコレートを食べていた事がわかり、それに青酸が含まれていたらしい。

その後、現場へ到着した警視庁捜査一課日和警部(長門勇)は意外な人物と出くわす。
岡山県警の「本陣殺人事件」の時知り合った金田一耕助だった。

金田一は、先ほど電話で呼出された岩下に会いに来た所だった。

そんな二人の再会もつかの間、ホテル内の階段の踊り場で新たな死体が発見される。

その男の死体の腕には、「しゅんさく、おとね」と描かれた相合い傘の刺青があった。

その男は、ジャズバンドでトロンボーンを吹いていた高頭俊作と言う男ではないか、だとすれば、彼は音弥と結婚すれば、100億円という莫大な遺産が受け取れるはずの人間であった事が判明する。

その死体の側に、くちなしの花が落ちていた事もあり、刑事たちは、その持主である音弥の行動を疑い出す。

しかし、金田一は、「くちなしの花」というのは、「口をつぐんでいろ」という警告ではないかと推理する。

さらに、別の場所では、金田一が探していた岩下の死体まで発見される。

その後、心痛で寝込んでいた音弥の部屋に、突然、先ほどであった謎の青年が忍び込み、音弥を無理矢理抱く。
彼は、俊作の従兄弟の高頭五郎(黒沢年男)と名乗った。
音弥は、こんな乱暴な行為に出た彼に対し、どこか憎めないものを感じていた。

上杉家では、殺された探偵の岩下に、同じ高頭俊作の調査依頼をしていたのは、上杉誠也と、佐竹建彦の二人だった事が判明していた。

その後、弁護士の黒川から呼び出しを受けたメンバーが、弁護士事務所に集まって来る。

佐竹玄蔵が残した100億もの遺産を受取るのは、当初、高頭俊作と結婚する事を前提に、全額音弥という事だったが、俊作死亡となった今では、第二の遺言状が有効となり、それによると、島原明美(三原葉子)、そのペット的存在古坂史郎(ピーター)、佐竹由香利(大関優子)とその親代わりだと言う鬼頭庄七(小池朝雄)、ダンサーの根岸蝶子、花子姉妹と、その興業主志賀雷三(小松方正)などに均等に分けられるのだと言う。

そして、この場にはいないが、かつて、玄蔵に殺された男の孫、竹内潤伍も相続権利者の一人だとも付け加えられた。

玄蔵が当初、高頭俊作に相続させたがっていたのは、彼が、自分の罪を被って、斬首された高頭省三の孫だったからである。

当然ながら、人数が減れば、それだけもらえる額が増える理屈になり、彼らは、得を下だけではなく、反面危険な立場になったとも言える。

しかし、そんな会合で、音弥が一番驚いたのは、あの高頭五郎が、堀井敬三と紹介されて、すました顔で臨席している事であった。

その後、自宅にいた音弥は、五郎から電話で、すぐにその家を出ろと唐突な連絡を受ける。

音楽会に出かけた音弥は、どうしても、その五郎からの電話が気になって、途中で抜け出し、指定された場所へ向おうとするが、会場を出かけた所を、最初に死亡したダンサーの片割れ笠原薫を同伴した建彦に出会い、慌てて、その場にハンケチを落としたのも気づかずに立ち去るのだった。

やがて、約束の時間より早く、指定した場所に到着した音弥は、進駐軍の兵隊たちに襲われそうになるが、その場に通りかかった車に拾われ難を逃れる。

しかみ、その車を運転していたのは五郎だった。

それを知って安心した音弥は、自分は、相続なんか放棄したい、先日会った佐竹由香利など、大人しく不幸せそうだったので、あの方に譲りたい等と言い出す。

それを聞いた五郎は、音弥に濃い化粧と派手な衣装に変えさせると、その佐竹由香利とその義父、実は、夫婦同然の鬼頭床七の舞台を見に行く。

そこには、昼間の顔とは全く違った姿があった。

二人がやっていた芝居とは、きわどいSMショーだったのである。

さらに、音弥と五郎は、根岸蝶子、花子姉妹のショーを見に行く。

それも、きわどい金粉ショーであり、驚いた事に、客席に古坂史郎まで観に来ているではないか。

さらに、島原明美が経営するバー「ボンボン」にやって来た二人は、個室に案内され、少し、用事を済ませて来ると一旦、場所を離れ、再び戻って来た五郎と共に、隣の部屋を覗く秘密の窓を開けてみた所、そこには、胸にナイフを突き立てられた明美がベッドで死んでいた。

しかも、その胸に刺さったナイフの柄には、音楽会場で落とした音弥のハンケチが結び付けてあるではないか。

そんな事とは知らない音弥は、五郎のねぐらで、一枚の写真を見せられる。そこには二重の塔が写っており、五郎が言うには「三つ首塔」というのだそうである。

その後、何とか、自宅に帰りついた音弥は、その夜の行動を警察に尋問されるが、彼女が答えたアリバイは全て立証されてしまう。

全て、五郎の計画通りだった。

しかし、警察は、その後、バー「ボンボン」から音弥の指紋が発見し、彼女は再び最重要容疑者となる。

金田一は、屋敷内の電気を切って、その隙に音弥を外へ連れ出そうとするが、通りかかった車に乗り込んだ音弥は、その運転手が五郎ではなく、志賀雷三であった事に気づき慌てるが、なす術もなく、そのまま志賀の住まいに連れて行かれるしかなかった。

志賀は、五郎と一緒に変装して、関係者たちの様子をあちこちを観て廻っていた彼女の事を見破っており、その事を種に関係を迫って来るが、飲んでいたウィスキーに毒が入っていたらしく、その場で悶絶して息絶えてしまう。

さらに、音弥は、そこの別室で、根岸花子の死体まで見つけてしまう。

その後、五郎に救出された音弥は、再び派手な衣装に着替えさせられると、佐竹由香利と鬼頭床七の出ている仮面舞踏会へ連れて行かれるが、そこには何と佐竹建彦も参加しており、時ならぬ警察の手入れで混乱した中で、音弥は、建彦に拉致され、彼の住まいへ連れて行かれる。

そこのベッドに縛り付けられた音弥は、やって来た笠原薫に嫉妬のあまり乱暴されかけるが、戻って来た建彦が、薫を懐柔している隙に部屋を抜け出し、外へ出ようとする。

その時、突然爆発音が響き、音弥は、突然その場に現れた古坂史郎に助けられる。

ところが、シロウのアパートに来てみると、そこのタンスの中から、根岸蝶子の死体が転がり出て来る。

処理に困った史郎が部屋を開けた隙に、音弥は、残されていたカバンの中から三つ首塔の写真を見つけだし、その裏に描かれた播州琵琶郡という場所の名前を知る事になる。

さっそく、五郎と二人で、その場所へ出かけた音弥は、堂守の法然和尚(殿山泰司)から中に安置してあった三つの頭像を見せられている家に、五郎は落とし穴に落とされ、さらに、遅れてやって来た古坂、鬼頭、佐竹由香利らによって、音弥も又、昔、無実の罪で斬首された高頭省三の処刑場であったと言う穴に突き落とされてしまうのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

1977年に放映された「横溝正史シリーズ」の第3エピソードに当り、4回に分けて放送された。

時間がタップリあるだけに、遺産を巡る連続殺人の様子や、戦後の風俗の裏側等が丁寧に描かれている。

黒沢年男は、アフロっぽいヘアスタイルと、自慢の胸毛を見せる野性味たっぷりの五郎役を演じている。

対するヒロイン、音弥を演じる真野響子も、上品な箱入り娘から、きわどい網タイツ姿まで、様々な姿を披露している。

出演陣が、映画版を思わせる程豪華なのも特長である。

見せ場が色々あるが、何と言っても、網シャツに黄色いスカーフ姿で鞭を振るう小池朝雄と、普段はおしとやかに見えながら、舞台では大胆な姿態を惜し気もなくさらけだす大関優子によるSMショーが見物。

大関優子とは、後の佳那晃子である。

又、女にむしゃぶりつくピーターと言う絵柄も、ちょっと意外性があって面白い。

いつもの事ながら、大量の関係者がほとんど死亡してからでないと、真犯人を指摘しない金田一の態度には疑問が残るが、戦後の風俗のセット描写や、実際に、当時650万円をかけて建造されたと言う実物大「三つ首塔」など、見所満載の巨編である。


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