幻想館

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女王蜂

1978年、毎日放送+三船プロダクション、石松愛弘脚本、富本壮吉監督。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

伊豆の西海岸にある月琴島にある「さおの崖」の上から、海に向ってユリを投げる美しい女性、大道寺智子(片平なぎさ)であった。

その月琴島に向う船には、速水欣造(神山繁)とその息子文彦(坂東正之助)、妻蔦代(岩本多代)、さらに欣造に依頼され、今は亡き友人の愛娘である大道寺智子を、自分の娘として貰い受けに行くためのだが、その智子を東京へ行かせないと言う、新聞紙から切り取った文字で作られた脅迫状をもらっていた事もあり、加納弁護士事務所の金田一耕助(古谷一行)を伴って乗っていた。

その金田一は、船酔いした母親を「蔦」呼ばわりする文彦との関係を奇妙に感じないではなかった。

一方、島の智子の方は、その場所で、しだを取ろうとして足を踏み外し、海に落下して亡くなったと言う父親の供養にやって来ていたのだが、気がつくと、顔に大きな火傷の後がある無気味な老人が近づいており、父親はそこで死んだのではないと言う言葉をかけて来る。

その見知らぬ老人の言葉に気味が悪くなってすぐに帰宅した智子は、使用人の姫野東作(田中春男)に迎えられる。

さらに、母親琴絵(斉藤恵子)が生きていた頃から使えていた家庭教師の神尾秀子(岡田茉莉子)も、智子の顔色が優れないのを心配した。

一方、智子の曾祖父に当る大道寺哲馬が作ったと言われる英国のウエストミンスター寺院風の時計台を目印とする大道寺家に到着した欣造一行は、女主人(南美江)と出会う。

その屋敷内には、鎧兜が飾られており、聞く所によると、源頼朝の寵愛を受けた多衣の末裔が、この大道寺家なのだと言う。

そんな頼朝の研究に東京からやって来ていると言う多門連太郎(夏夕介)も、その屋敷に滞在していた。

やがて、歓迎の舞踏会が開かれるが、智子と踊りたがっていた文彦は、横から現れた多門に智子を奪われる形となり、憤りを隠せないでいた。

そんな舞踏会に疲れた智子は自室に戻って来るが、そこの鏡に、赤い口紅で書かれた「お前は、近づく男たちを喰い殺す女王蜂だ、東京へは行くな」という脅迫文めいた文字を発見しおののく。

その翌日、金田一は、庭の掃除をする東作に、今後、この屋敷が、欣造の別荘となるのだが、その後の身の振り方はどうするのかなどと尋ねながら、たき火の中から、文字が切りぬかれた新聞紙を発見する。

その後、金田一は、加持祈祷師だという九十九龍馬(川合伸旺)なる怪し気な人物とも出会う事になる。

その後、屋敷内で卓球をしていた多門と文彦は、ちょっとした事から掴み合いの喧嘩となり、仲裁に入った智子は、折れて血の付いたラケットを見ている内に、気を失ってしまう。

いつか、開かずの間に入る鍵を発見した彼女は、こっそり一人で入ってみたその部屋の中で、血の付いた床と、折れた月琴を発見していたので、それを連想したのである。

そんな智子を見た龍馬は、頼朝の妻の霊が憑いた等と言い出す。

その後、気が憑いた智子は、「今夜9時半に時計塔へ来い」と言う脅迫文を受取り、それに従って、時計塔の中に入っていくと、ゼンマイ仕掛けの部屋の所で、以前から秘かに智子へ思いを寄せていた漁師の遊佐三郎の惨殺死体を発見する。そこへ多門も駆けつけて来る。

そんな騒ぎの中、何時の間にか、姫野東作の姿も見えなくなっていた。

近年希に見る怪事件に振り回される島の駐在の山本巡査(三谷昇)は、岡山県警から船で到着した日和警部(長門勇)を出迎える事になる。

日和警部は、懐かしい金田一と再会する。

翌日、海岸に出かけていた文彦は、岩の洞窟内で東作の絞殺死体を発見する。

何故か、その首には、赤い毛糸が巻き付いていた。

さらに、死体の側には、文字を切りぬいた跡のある新聞紙も発見され、今まで、脅迫状を作っていたのが彼だった事が分かる。

その毛糸は、神尾秀子の物と分かるが、彼女が言うには、死んだ三郎と東作がひそひそ話をしている所を偶然見てしまった事があり、毛糸はその時落としたものであり、彼女は、東作が「蝙蝠を見つけた」と話していたと証言する。

一方、母親の墓の所で見つけたと話す智子から鍵を預かった金田一は、それを使って、開かずの間に入ってみるが、そこで、折れた月琴、毛糸のたば、血の跡を拭ったような床を確認するが、何者かによって頭を殴られ、気が付いた時には、表で寝かされていたのを、日和警部に発見される事になる。

島の写真館を訪れた金田一は、壁に飾られた写真に、古い旅役者一行を写した写真を見つけ、その座長の嵐三朝と言う人物が、死んだ東作と同一人物である事に気づき、神尾秀子と欣造にも確認を取ってみる。

その頃、自分に近づく男性が次々と死んでいく様を見て、自分は本当に女王蜂かも知れないと疑いだした智子は、研究中の多門の部屋にチョコレートを持っていき、東京に帰ってくれないかと頼み込んでいた。

しかし、その直後、食事の時間になっても姿を見せない多門の様子を部屋に見に行った者たちは、そこに、チョコレートに混入されていた青酸化合物で無惨にも死亡していた彼を発見するのだった。

金田一はと言えば、もう一度、開かずの間の中を調査しようと、山中巡査に頼んで無理矢理鍵を壊そうとしていたが、それを見て慌てて止めようとした龍馬が、すべて、歌人の許可をとってあると聞かされ、しぶしぶ退散したので、その後を追った金田一は、龍馬が折れた月琴等を持ち出していた事を知る。

さらに、彼の口から、かつて、あの開かずの間の中で、夢遊病の気があった琴絵が、頭を潰されて死亡した智子の父親日下部と一緒に発見された事件の事を話しはじめる。

現場は、完全に鍵のかかった密室で、室内にいたのは、二人だけだったのだと言う。

結局、琴絵の病気による事故と判断した龍馬と神尾秀子は、相談して、父親日下部の遺体を崖から海に投げ込んだのだとも。

しかし、その話を近くで偶然立ち聞いた智子は、自分の父親が実の母親に殺されたと知り、計り知れないショックを受けてしまう。

そんな智子を慰めようと、自分の部屋に連れて来た龍馬は、突然態度を急変させ、彼女を襲おうとする。
彼女に、かねてより思いを寄せていた母琴絵の面影を重ねて、思わず欲情したのであった。

しかし、あまりのショックで再び失神した智子が気がが付くと、側には背中にナイフが刺さって絶命した龍馬の遺体が横たわっていた。

その部屋は、内側から鍵がかかったままの密室に思えた。

だが、その後、金田一の指示に従い、その部屋の様子を調査してした山中巡査は、寄木細工仕掛けで秘密の通路を開く鍵を見つけ、そこが密室ではなかった事、従って、智子が犯人ではない事を証明できたのだった。

やがて、金田一は、関係者を一同に集め、事件の謎解きを始める…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

1978年に放映された「横溝正史シリーズ�」の6番目のエピソードであり、3回に分かれている。

事件は全て、月琴島という絶海の孤島で起き、ちょっと、雰囲気的には「獄門島」に近いものがある。

ただし、犯行手段などは地味なものが多く、「獄門島」ほどの怪奇性やケレン味はない。

また、事件のほとんどが大道寺家の屋敷内で起こるとあって、物語全体のスケール感にも乏しい。

重要な役所を演じる岡田茉莉子は、この当時、肥満気味で、すでにあまり美しいとは言えなくなっており、さらにヒロイン役を演じる片平なぎさも、アイドル的な可愛さはあるものの、男を食い付くす「女王蜂」と称される妖し気な美貌と言う感じでもなく、全体的にやや華がない感じは否めない。

女優陣がそうである以上、男優陣はもっと地味で、かろうじて、昔、数々の映画で名脇役を演じて来た田中春男の登場や、探検服姿で登場する長門勇の、何ともとぼけた存在感にマニア心をくすぐるくらいで、全体的に魅力に乏しい。

全体的にコンパクトに纏まっていると言えば言えるが、正直、今一つインパクトに欠ける、平凡な印象の作品ではないだろうか。


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