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悪魔が来たりて笛を吹く

1977年、東宝、毎日放送、横溝正史原作、石森史郎脚本、鈴木英夫監督作品。

この作品は、本格謎解き作品ですが、最後まで詳細にストーリーを書いていますので、御注意下さい。コメントはページです。

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第1回

昭和22年1月15日、午前10時頃、銀座の宝石店「天銀堂」に、都衛生局の腕章を付けた男がやって来て、近所で、集団赤痢が発生したので、その予防薬と称して店員全員に薬を飲ませたが、それが青酸カリだったので、10名死亡、3名だけがかろうじて命を取り留め、大量の宝石類が盗まれると言う事件が発生する。

そのニュースを報ずる号外を、号外配りからもらって来た「金田一探偵事務所」の世話おばちゃん(野村昭子)は、それを金田一耕助(古谷一行)に読ませる。

生存者の証言によりモンタージュ写真が作られ、翌日の毎日新聞の一面に掲載されるが、それを観て驚いていたのは、元貴族院を牛耳っていた大物、玉虫元伯爵(加藤嘉)であった。

彼は側にいた妾の菊江(中山麻理)にモンタージュを見せると、あき【秋のへんとつくりを逆転した文字】子(草笛光子)にも見せようと屋敷内を探す。

あき子の夫で子爵の椿英輔(江原真二郎)にモンタージュが生き写しだったからである。

その騒ぎに出て来たあき子の主治医で、屋敷内に同居している目賀博士(観世栄夫)は、英輔なら1月14日から箱根に出かけていたはずだと教える。

その新聞を持って、二階の英輔の書斎に出向いたあき子は、フルートを吹いていた英輔本人に、事件当日の箱根行きを確認するが、英輔は、自分は妻を満足させられない男だと自嘲気味に呟く。

それは、彼自身に生活能力がない事だけではなく、肉体的な意味も含んでおり、今現在、目賀博士が、なかば公然と、あき子と通じ合っている事への皮肉でもある事に気づいたあき子は、私を憎んでいらっしゃるのね…と、寂しく答えるのだった。

そこに、二人の娘美禰子(壇ふみ)が何事かと顔を覗かせるが、そんな椿家に警視庁の日和警部(長門勇)と部下の出川刑事(森次晃嗣)がやって来て、英輔を任意で警察に連行した後、家族全員から話を聞く事になる。

まず、玉虫元伯爵、菊江、に次いで自己紹介したのは、戦争で家が焼けた為に、今、離れを借りて住んでいると言う新宮利彦(長門裕之)とその妻華子(岩崎加根子)、二人の息子である一彦(星正人)、あき子に実家時分から付いている世話係信乃(原泉)は、旦那様は事件当日、箱根 芦之湯に行っていたと証言する。

さらに、女中、種(白石幸子)、下働きの三島東太郎(沖雅也)が自己紹介した後、目賀博士が、英輔は作曲のため出かけていたはずだと補足説明する。

その頃、警察で事情聴取を受けていた英輔だが、 芦之湯に照会の電話を入れた等々力刑事(早川保)から、それが嘘だった事が分かったと追求されると、実は、事件当日は兵庫県須磨の三春園に行っていたと証言を翻す。

警察が英輔に目を付けたきっかけは、一通の密告投書だったと教えられた英輔はそれを見せてもらうが、切り貼りで宛名を記された封書と、その中身の手紙を見ておののくのだった。

英輔が警察に連行されて4日が経過した。

玉虫元伯爵は、椿家の家名を汚されたと憤慨していたが、新宮利彦は、こうなったら、この屋敷と土地の権利の半分を自分が譲り受けても良いのではないかと大胆な提案を持ちかけていた。

そんな所へ、当の英輔がようやく帰宅して来たので、父親の無実を信じる美禰子は彼にすがりつくのだった。

憔悴しきった英輔は、この屋敷には悪魔が憑いている。そいつが自分を密告した手紙には、事件前後の自分の行動が詳細に記されており、そんな事が書けるのは、この家に住む者以外にないと悔しがる。

3月5日、信州霧ヶ峰山麓で、青酸カリを服用した英輔の自殺死体が発見される。

その父の自分宛の置き手紙を手に、美禰子は金田一耕助を訪ねていた。

彼女が言うには、母とお供のお種、菊江も揃って、歌舞伎座に行った際、死んだはずの父の姿を観たのだと言う。

今夜、目賀博士による、事件の真相を占う降霊会があるので、自分の従兄弟一彦が通っている音楽学校の先輩という事で、金田一に出席してくれないかと言う依頼であった。

椿邸に出向いた金田一は、目賀博士から、当夜行われる砂占いについて説明を受けると、8時半から30分間停電する間に行うと言う。

真っ暗では何も見えないので、ホームライトだけ必要と言う目賀博士の要請を受けた三島が、お種に用意させたと報告に来る。

金田一に初対面のあき子だったが、娘から彼の素性を聞いているのか、夫は生きており、自分へ復讐する機会を待っているに違いないと怯えていた。

そこに、菊江が占いの準備が出来たと、二人を呼びに来るが、その途端に停電になってしまう。

お種が懐中電灯を持って来て、砂占いの準備が整った書斎に家族全員が集まって来る。

金田一は、部屋に入る前、愛用の「おかま帽」をどこかにかけようと迷い、近くにあった台の上の壺に乗せる。

暗闇の中で、あき子は、二階で足音が聞こえる等怯えるが、他の者には聞こえなかったので錯角らしい。

三島は、用意したホームライトも、きちんと調整していないので、途中で消えるかも知れないと注意する。

書斎に一番遅れて来たのは、いつものごとく新宮利彦だった。

丸テーブルを囲むように座った家族の様子を、それとなく観察していた金田一は、三島がいつも左手にしている手袋の様子から、彼の左手は中指と薬指が動かないので、それを隠しているのだと気づく。

菊江は、全くこの占いを信じていない様子。

やがて、あき子が、催眠術にでもかかったかのようにふらふらと立ち上がると、砂の上に組まれた櫓の上に広がる棒の一つに手を触れる。

さらに、同じように美禰子、菊江、一彦らが立ち上がり、同じように中央の棒に手を添える。

すると、それらの棒が集まった櫓の上から砂に垂れ下がった分銅が静かに動き始め、白砂の上に何やら描きはじめるではないか。

その瞬間、ホームライトが消えてしまい、部屋は漆黒の闇の中に。

その後、停電が終わったらしく、室内が明るくなると、白砂の上には、炎のような紋様がくっきりと描かれているのが分かる。

それを観た玉虫元公爵は、「誰だ!こんな、悪ふざけをしたのは!」と怒鳴る。

室内にいた全員は、どこからともなく聞こえて来るフルートの音色に驚く。

外で待っていたお種が、開けてくれとドアを叩くので、開けてやると、二階から聞こえて来ると怯えている。

美禰子、一彦、金田一らは、恐る恐る二階に登って行くと、フルートの音色は、どうやら、死んだはずの英輔の書斎から聞こえて来るらしい。

勇気を振るって、中に入った美禰子や金田一は、その部屋の中で鳴っている蓄音機のレコードを発見する。

レコードに記された「悪魔が来たりて笛を吹く」と言う曲名は、英輔の最後の作品なのだと美禰子が説明する。

あき子は、家中のレコードは全て割ったはずなのにと不気味がるし、美禰子も、三つに折り畳める父愛用の黄金のフルートが見当たらないと報告する。

目賀博士は、恐怖に怯えるあき子を寝室に連れて行くと、鎮静剤を注射して眠らせる。

金田一は、このトリックは、最初から今夜の停電の事を知っているものならば、誰にでもできると種明かしを始める。

停電の直後、レコードを乗せた蓄音機のスイッチを入れたまま砂占いの部屋に行けば、電気が通っていない三十分間はレコードは鳴らないが、停電が終了した9時になれば、自然に蓄音機にも電流が流れ、レコードが廻ると言う単純なもの、どうやら、犯人は、占いの席から注意をそらしたかったらしいと金田一は推理する。

白砂に描かれた炎の意味が分かるかと聞く金田一に、美禰子も分からないと答えるが、前観た父親の懐中日記の文中に同じ紋様があって、その下には「悪魔の紋章」と記されてあったと教える。

砂占いの装置を取り払おうとした三島は、何故か、書斎に残ったままの玉虫元伯爵から動かすんじゃないと叱られる。

一方、新宮利彦は、何故か、自分の背中の方を気にしている様子。

金田一は、壺の上の帽子を取ろうとするが、引っ掛かってしまったらしく取れない。

三島が代わりに取ろうとするが、帽子が破けてしまう。

そんなどたばた劇を演じていた廊下に向って、部屋の中から、「うるさい!」と怒鳴る玉虫元公爵の怒声が響いたので、何気なく室内を観た金田一は、風神の彫刻を発見し、そんなものが前からあったかと疑問を感じるのだった。

書斎に居座った玉虫元公爵は、そこで鮭を飲みはじめ、菊江が迎えに来ても寄せつけない。

玉虫元公爵は、「能無しの英輔、生きているとは…」と呟いていた。

その頃、あき子から寝ている所を起こされた信乃は、怖いので御不浄に一緒に付いて来てくれといわれ同行するが、あき子がトイレに入った瞬間、フルートの音が聞こえはじめ、飛び出して来たあき子と共に、信乃も思わずトイレの中の窓から見える夜の庭先に、無気味な男が立ってフルートを吹いている姿をかすかに見る。

玉虫元伯爵が独りいた書斎には何者かが侵入し、その姿を観た元伯爵は何事かに気づくが、次に瞬間、占い用の鉢の白砂に血痕が飛び散る。

金田一耕助は、事務所の寝室で、悪夢にうなされ飛び起きていた。

彼の夢の中にも、悪魔が忍び込んでいたのである…。

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第2回

書斎に午前様こと玉虫元公爵を迎えに行った菊江は、中から鍵がかけてあるらしく扉が開かないので、横にあった壺を置いた台を踏み台代わりにして、扉の上部にある換気用の細い窓部分から中を覗いてみると、倒れている元伯爵の足が見えた。

三島を起こしに行くが、彼が駆け付けても、鍵は内部からかかっているので開く事が出来ない。

さらに、菊江は、あき子と同衾していた目賀博士に異変を知らせに行く。

飲み過ぎによる脳いっ血で、玉虫元伯爵が倒れたと思っていたからだ。

信乃も何事かと、起きて出て来る。

庭に出ていた女中のお種は、庭の植木の中に、フルートを加えた男の姿を見かけ、思わず「旦那様!」と呼び掛けていた。

目賀博士からの依頼で、三島が書斎の扉の鍵の部分を、斧で壊しはじめ、ようやく裂け目が出来たので、そこから腕を入れ、かけがねを外して扉をあける事が出来た。

そこに、新宮一家もやって来るが、中に飛び込んだ目賀博士は、明らかに頭を割られて絶命したと思われる玉虫元公爵の遺体を発見する。

早朝、美禰子から電話を受けた金田一は、自転車で椿邸に向う。

入口で張り番をしていた警官に足留めされるが、中にいた等々力刑事から声をかけてもらい、中に入る事ができる。

書斎で検死していた日和警部に再会の挨拶をすませた金田一は、玉虫元伯爵の顔面の血を誰かが拭った後があると聞かされる。

金田一は、占い用の白砂の上に記された赤い炎の紋様を写真に撮っておくよう勧める。

死体が運び込まれると、金田一は、扉の上の換気窓は狭過ぎて、人がくぐり抜ける事は不可能だし、庭に面した窓には、外から鉄格子がはめられているので、こちらも脱出不可能、つまり、この状況は密室殺人だと指摘する。

日和警部は、被害者は雷神像で撲殺されたと教える。

金田一は、誰か紐を持っていないかと尋ね、出川がポケットから取り出した紐を借りると、それを使って、扉の留め金を、換気窓を利用して外から操作してはめる方法をその場で披露しはじめる。

熱心にその様子を観ている新宮利彦。

一彦は、美禰子に、伯父(英輔)の仕業だと思うと話していた。

そこへ、等々力が、防空壕の中にあったと言って、英輔のフルートのケースを持って来る。

中は空だったが、そのケースには、三つに分解できる黄金のフルートが入っていたと美禰子は証言する。

日和警部は、そのケースの隅にあるものを見つけると、華族の者たちには引き上げさせると、ただちに等々力らにそれを渡し、天銀堂事件の盗難品との照合と命ずる。

金田一が観たそれは、ダイヤの耳飾りの片割れだった。

日和警部は、一旦は釈放し、その後自殺した椿英輔は、やはり、天銀堂事件の犯人であり、今も実どこかで生きているのかも知れないと言い出す。

その後、美禰子と共に防空壕にやって来た金田一は、2、3日前にここに来た時には、あのケースはなく、あれは、父が行方不明になった頃からなくなっていたものだと美禰子から聞かされる。

屋敷に戻った金田一と日和警部の元に妻華子を伴いやって来た新宮利彦は、見せたいものがあると言いながら服を脱ぎ、背中を二人に見せる。

そこには、あの占いの白砂に描かれたのと同じ炎の紋様の痣があった。

普段はほとんど目立たないが、酒を飲んだり、入浴後等にははっきり現れるそうで、家族の者は全員、この事を知っているはずなのに、あえてそれを誰も言い出さないのが嫌だったと利彦は言う。

その様子を、菊江が盗み聞きしていた。

庭の一隅にある温室で、蘭の世話をしている三島に出会った金田一は、彼の口調に関西訛りがある事を指摘し出身地を尋ねると、三島は、呉、尾道辺りだと曖昧な返事。

中学教師をやっていた彼の父親が転々としている内に生まれた子だからだと言う。

物心付いた時は、広島や岡山に住んでおり、復員して来ると父母がいなくなっていたので、仕方なく、上京して闇ブローカー等やっていた時、 父の中学時代の友人、椿子爵の事を思い出し、会いに来たのが、ここで雇ってもらうきっかけだったと言う。

そこへ、等々力刑事が戻って来て、日和警部に、あのダイヤの耳飾りは、やはり、天銀堂から盗まれたものの片割れだったと報告するのを金田一も聞く。

その様子を、窓からうかがっていた菊江に気づいた金田一が、声をかけようと室内に入って行くが、逃げるように菊江は姿を消していた。

そこへ、金田一を呼ぶあき子の声が聞こえ、行ってみると、今度は私の番よ、守って!と怯えており、目賀博士が彼女の元へやって来る。

美禰子は金田一に、父親の日記の2月20日欄に、「ウイルヘルム・マイステルの修行時代」を本棚に戻すと記されていたが、その本の中に遺書があった事を伝える。

父親、英輔が警察に連れて行かれたのが、その2月20日、つまり、英輔は、天銀堂事件の容疑をかけられる以前に自殺を考えていた事になる。

金田一は、等々力や出川に、天銀堂事件と英輔の事は再調査する必要があると言い残し、自らも須磨に出かける事にする。

探偵事務所のおばちゃんは、家賃代として300円置いて行くか、金田一の双眼鏡を取ろうとするが、金田一に泣きつかれ、仕方なく、いつものようにそのまま送りだす事になる。

出川と金田一が乗った列車には、もう一人、マスクをした謎の男が乗っていた。

金田一と共に、須磨、三春園に到着した出川は、さっそく女中のおすみ(児島美ゆき)に、泊まりに来た椿子爵は何をしていたかと性急な質問をぶつけるが、おすみは女将さんに聞いてくれと逃げ帰る。

それで、その女将(三崎千恵子)を呼び、事情を聞くと、昔、丘の上に、今は空襲で焼けてしまった玉虫元伯爵の別荘があり、椿子爵はそこに行っていたようだが、顔色が悪かったと証言する。

その別荘には、戦争のちょっと前まで、玉虫元公爵の姪に当るあき子と、その兄である新宮利彦が毎年泊まりに来ていたとも。

別荘に付いての詳しい事は、当時、出入り職人だった植木屋の植辰の弟子、植松なる人物に聞いたらどうかと言う。

金田一は、考えをまとめる為、部屋で逆立ちをしていたが、そこにやって来たおすみに案内させ、玉虫元伯爵の別荘跡に連れて行ってもらう。

今や草むらと化したその場所には石灯籠だけが残されており、1月15日の夕暮れ、その側に立っている椿英輔を見かけたと、おすみは証言する。

その石灯籠を調べていた金田一は、そこに「悪魔ここに誕生す」と言う文字が書かれている事に気づくのだった。

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第3回

出川刑事は、植松から話を聞き込んでいた。

空襲で亡くなった彼の師匠に当る植辰にはお玉と言う妾がおり、その娘の駒子が、別荘に働きに言っていた時妊娠してしまった為、仕方なく、弟子の源助と言う男に添わせたと言う。

その源助は、その後、肉体労働等する内に病気になり、精神的におかしくなって死んだそうだ。

駒子が生んだ小夜子と言う女の子は、後に芦屋の屋敷で女中をしていたらしいが、結局、亡くなったと言う。

お玉は、今、神戸にいるのではないかとも。

三春園に戻って来た金田一は、おすみの証言から、椿英輔は、泊まった三日間の内、16日だけは、朝から弁当持参で出かけ、明石へ行くには、省線が良いか、山陽電鉄が良いかとも聞いていたと言うので、どこか遠くに行った事が推測された。

一方、神戸に出向いた出川は、ミナトハウスと言う旅館の女将から、お玉なら今年三月に急に辞めたと聞かされる。

その後、妙海尼と言う尼さんが10月1日にやって来て、淡路からやって来たと、お玉に伝えてくれと言い残して帰ったが、一昨日も又やって来たと言う。

さらに、今日、3時間程前に、眼鏡をかけ、口ひげをはやした男もお玉の消息を聞きに来たと言うので、出川が椿英輔の写真を見せると、似ていると言うではないか。

その頃、淡路島の寺で、1941年10月1日付け「玉虫元子爵殺害事件」を報ずる新聞記事を熱心に読んでいた妙海尼(東郷春子)は、突然、部屋に侵入して来た人物から絞殺されてしまう。

聞き込みから戻って来た出川の話を聞いた金田一は、妙海尼とは、お玉の娘である駒子ではないかと推理する。

それを聞いていたおすみは、16日帰って来た英輔の洋服からは強い潮の匂いがし、ズボンの裾には、魚のウロコが二つ付着していたので、船に乗って淡路島に渡ったのではないかと言い出す。

金田一は、その後、石灯籠へ出川を連れて行き、書かれていた文字を読ませようとするが、奇妙な事に、その文字は綺麗に削り取られていた。

削り取られた痕跡を観ていた出川は、ミナトハウスに現れた男の仕業ではないかと疑う。

その後、英輔を淡路に船で運んだ漁師を見つけた出川と金田一は、その男の口から、英輔は淡路島の長浜、釜口村に住む妙海尼に会いに行くと言っていたとの証言を得、自分達も淡路島に行ってみる事にする。

同じ頃、東京の成城南郵便局にやって来た新宮利彦は、飯島信乃宛の電報を打っていた。

さらに、椿邸のあき子の側にいた目賀博士の元には、明後日執り行なわれる予定だった医学研究会が、急遽今晩に変更になったとの電話が入っていた。

淡路島に着き、ボンネットバスに乗り込んだ金田一と出川は、出発間際に乗り込んで来た警官と医者らしき姿を観て、胸騒ぎを感じ、事情を聞きに行くと、今から自分達が会いに行くつもりだった妙海尼が殺害されたと言うではないか。

何でも、6時頃、洲本方面から来た男が怪しいと言う。

警官に妙海尼の本名を聞くと、金田一の想像通り堀井駒子だった。

犯人らしき男は、バス停がある雑貨屋の女将に終バスの事を聞いていたと言う。

現場に着いた出川が、その雑貨屋の女将に英輔の写真を見せてみると、帽子を被り、ヒゲを貯えていたが、確かに似ていると言う。

金田一と出川は、警官から、妙海尼を世話していた住職の慈道(吉田義夫)を紹介される。

慈道が言うには、玉虫元伯爵殺害事件を知った妙海尼は、犯人の心当たりがあると言い、事件を報じたたくさんの新聞を読みあさっていたと言う。

さらに慈道は、妙海尼こと駒子には小夜子と言う娘がおり、その父親は新宮利彦であり、妙海尼は、この事件はこれだけでは済まず、次は利彦が殺されるとも言っていたと金田一たちに教える。

慈道は、昭和18、19年頃、駒子の娘小夜子に会った事があり、その小夜子は自殺しており、今回の事件と関係あると、妙海尼が言っていたとも。

出川は、さっそく、東京の警視庁日和警部に電話すると、新宮利彦の身辺警護を厳重にしてくれと要請する。

その利彦は、屋敷にやって来た郵便屋から信乃宛の電報を受取ると、何喰わぬ顔で、それを女中のお種に持って行かせる。

その夜の夕食の席、菊江はこれから歌舞伎を見に行くと言う。

信乃は、成城の及川の家から電報を受取ったので出かけたと言い、目賀博士は学会で横浜に行っており、美禰子は一彦の就職の世話をしてくれる人に一緒に会いに行くと言う。

さらに、利彦は、妻の華子にまでも、お前の父親が援助してくれないので、高利の借金に苦しんでいる自分は、手が後ろに廻りかねないと言い出したので、華子は今夜中に、父親の所に行って工面して来ると言わざるを得なくなる。

三島は、明日が玉虫元伯爵の初七日なので、その準備のため奔走しており、つまり、その夜、椿邸には、女中のお種以外には、利彦と、妹のあき子の二人だけになってしまう。

誰もいなくなった屋敷の中、あき子の部屋に忍んで来た利彦は、彼女を抱きつくと、彼女の指にあったダイヤの指輪を抜き取りながら、兄さんを助けてくれと甘えた声を囁く。

その肉体的な誘惑に抵抗できなくなったあき子は、指輪をあっさり渡すと、そのまま兄に身を任せてしまう。

そこへ帰って来た三島は、あき子の部屋の灯が消えるのを庭で観た後、人が少なくて怯えていた女中のお種から迎えられる。

庭には、一応、刑事が三人張込んでいるので安心だと、三島は慰めるが、そこへ信乃が、及川家では誰も電報は打っていなかったと言いながら帰って来る。

その頃、あき子のダイヤの指輪を奪い取った利彦が、離れに戻る途中、温室の中に何かを見つけ覗き込んでいた。

屋敷には、菊野も帰ってきており、その直後、いたずら電話に騙されたと憤慨しながら目賀博士も戻って来る。

おかしな事が連続して起こるので、お種は又怯えるのだった。

そこへ離れから華子がやって来て、亭主が来ていないかと言う。

あき子の寝室で、蘭の花びらを見つけた目賀は、嫉妬にかられ、あき子にここで何をしていたと問いつめるが、その時、彼女の指にあったはずのダイヤの指輪がなくなっている事に気づく。

あき子は、ただ、許してと言いながら、目賀に抱きつく。

その時、どこからともなく、フルートの音が聞こえて来たので、様子を観に外に出てみた目賀博士は、同じく、音の出所を探しに出て来た美禰子や菊江と合流し、一緒に音のする温室の方へ行ってみる。

温室の中には、はたして蓄音機が廻っており、フルートの音は、又してもそのレコードの者だったが、周囲を見回していた美禰子は、白い蘭の花びらに飛び散った血痕に気づき、さらに、華子が額を割られ死亡している夫利彦の姿を発見する。

須磨の海岸を散策していた金田一は、おすみに案内されて来た県警の刑事からその事件の事を知らされると、慌てて駆け出すのだった。

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第4回

金田一は、独り列車で東京に戻って来ると、椿邸に直行し、捜査をしていた日和警部から、犯行は7時半頃と聞く。

外の水道からバケツに水を汲んでいたお種は、何事かに気を取られているようでボーとしていた。

一方、屋敷の中にいた菊江は、至極のんびり、ソファーに寝そべりながら煎り大豆を食べていた。

金田一が夕べのアリバイを聞くと、8時頃帰って来たと言う。

あき子に出会った金田一は冗談で、この屋敷は何かに呪われているのかも知れないと言ってしまい、ますます彼女を怯えさせたので、一緒に付いていた目賀から怒られてしまう。

その後、お種に、奥様のダイヤの指輪がないようだけどと聞くが、お種は何も知らないと言って逃げるように立ち去る。

三島にアリバイを聞くと、9時頃、表門の刑事に挨拶しても戻って来たと言う。

温室に行った金田一は、検死医から、利彦は風神像で殴られた後、紐で絞め殺されたと教えられた後、置いてあった電蓄は、家のものではなかったと日和警部から聞かされる。

温室内部を調査していた等々力刑事は、蘭の花びらに引っ掛かっていたダイヤの指輪を発見する。

利彦の遺体が屋敷に戻って来る。

日和警部は、温室で見つかった指輪を持って、あき子に見せに行くが、夕べ、夕食後、自分が兄に渡したと言うばかり。

日和警部は、そのあき子の亭主気取りになっている目賀が怪しいのでないかと金田一に伝える。

動機は、あき子の財産目当てだと言うのだ。

やがて、利彦の仮通夜が行われ、それを抜け出した一彦が温室に向ったので、金田一も付いて行く。

金田一に気づいた一彦は、殺された利彦は、詐欺まがいの商売をしており、日頃の言動も下品きわまりなく、みっともない父親だったが、惨たらしい殺され方を見ると、犯人が憎いと憤ってみせる。

その頃、仮通夜から自室に戻って来た目賀は、あき子と仮祝言した事を刑事たちに打ち明けたら、さぞ驚くだろうと呟いていた。

そして、取り乱すあき子に目賀は抱きつくのだった。

金田一は、当夜の警護の様子に付いて等々力刑事に問いただしていたが、広い屋敷なので、目が届かない場所がいくつもあったと教えられる。

4日の朝、神戸にいた椿英輔が、その夜東京に来られるはずがない。

金田一は、風神像の土台部分が輪切りにされ、その後、膠で再び張り付けられているのを発見する。

再び、あき子の話を聞こうと屋敷内に戻った金田一だったが、信乃から、これ以上詮索するなと釘を刺されてしまう。

そんな金田一の側に来た菊江は、面白そうに、又、デッドロックに乗り上げたのかと揶揄するが、芸者時代から吸っていたと言う煙草を吹かしはじめると、玉虫元伯爵と新宮利彦は、もともと仲が悪かったと教えた後、又通夜の席に戻って行く。

その夜、探偵事務所に戻った金田一は、大きな紙に「悪魔の紋章」「悪魔ここに誕生す」と言う文字を書き、その二つの悪魔の関連性に頭を悩ます。

翌朝、日和から電話を受けた金田一は、目賀の死体が発見された事を知らされ、又、自転車で椿邸に駆け付ける事になる。

目賀の死体は、庭にある池の中から引き上げられていた。

死因は絞殺で、死後2、3時間経過していると言う。

発見者は、三島だった。

金田一の姿を見かけ近づいて来た菊江は、あなたは名探偵なのに、次から次に事件が起こる、どうなっているのとからかう。

美禰子に聞くと、母のあき子はひどく興奮したので、注射してもらったと言う。

信乃が言うには、毎朝、1時間程度散歩に出かける目賀博士が、今日に限って、2時間経っても戻って来ないので、三島に様子を観に行かせたら死体を発見したと言う。

金田一は、日和警部に、天銀堂事件の時、椿英輔を密告した手紙自体は良く調べたのかと聞いてみる。

すると、手紙の文面は英文タイプライターで打たれていたと言う。

さっそく、美禰子に、この家の中に英文タイプがあるかと聞きに行った金田一は、あっさり自分が持っていると教えられる。

自分以外にも、この屋敷の中では、菊江と一彦がタイプが打てるのだそうだ。

そのタイプで美禰子に試し打ちをしてもらった文面と、等々力刑事が持って来た密告状の文面を照らし合わせてみると、文字が似ている。

さらに、注意して密告状を調べていた金田一は、アルファベットのWとZが、全て逆に打たれている事に気づき、美禰子にそうなる可能性を聞くと、ドイツ製のタイプライターの場合、その二つの文字が逆になっているのだと言う。

母親あき子は、自分と夫の英輔は従兄弟同士の結婚だったし、祖母の両親も従兄弟同士だったので、そう言う謹慎結婚の血筋の事を、かねてから気にしていたとも美禰子は教えてくれた。

警察に戻り、部屋の黒板に「A=X B=X A=B」書いた金田一は、訳が分からない日和たちに、その説明をし始める。

つまり、椿英輔のそっくりさんがいると言うのだ。

それで、飯尾豊三郎と言う人物の事が浮かび上がって来る。

その男の写真と英輔の写真を事務所で見比べていた金田一の元に、とどろきから電話が入り、芝の増上寺で殺しの遺体が発見されたと聞かされる。

現場に急行した金田一は、顔がずたずたに傷つけられた遺体を見るが、その体型から、飯尾豊三郎に間違いないだろうと、等々力から聞かされる。

遺体は、野犬に土の中から掘り出されたのであり、飯尾豊三郎の職業は闇物資のブローカーだったと言う。

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最終回

金田一は、関係者全員の戸籍を洗い直していた。

その頃、須磨に居残って捜査を続行していた出川刑事が戻って来て、あの人物は、やはり先生の言う通りだったと、電話で金田一に報告して来る。

椿邸では、三島東太郎が珍しく自室で昼間から酒を飲んでいた。

そこへ、美禰子が、お三時を一緒に食べようと誘いに来たので、慌ててシャツに着替えると、皆が集まり、華子お手製のサンドウィッチを食べている応接室にやって来る。

ところが席に付いた三島は、隣に座っていた菊江から、シャツが裏返しだと指摘される。

慌てて着替えようとした三島に、女性たちは目を背けるが、男性陣が気にせずこの場で着替えろと言うので、三島は鏡の前に立つと急いでシャツを裏返して着直すのだが、その時、ふと視線を上げ、鏡を覗いたあき子は、何を観たのか急に興奮しはじめ怯えだしたので、そのまま寝室に連れて行かれる。

そこに金田一がやって来たので、菊江は、三島が珍しく酒の匂いをさせていたと教える。

お種も、三島は普段は酒なんか飲まないのだと言う。

母親をなだめて帰って来た美禰子は、悪魔の紋章と言っていたと報告する。

それを聞いた金田一は、皆を集めてくれと美禰子に依頼する。犯人が分かったと言うのだ。

警察からは、等々力刑事が先にやって来る。

まずは、最初の玉虫元伯爵殺害現場である書斎に集まった関係者一同に向い、金田一は、砂占いのトリックに付いて明かしはじめる。

あの夜、書斎にあったのは風神像だったと言うのだ。

その風神像の底にあった炎の判子で白砂に押したのが「悪魔の紋章」で、その後、その風神像を隠そうと扉横のにあった壺に隠そうとした犯人だったが、その壺には、金田一のおかま帽がひっかかっていたので入れる事が出来ず、そのまま応接室に置いておくしかなかったのだ。

その後、金田一の帽子を取った壺の中に入れておいた雷神とすり替えようと、もう一度書斎に戻って来た犯人は、まだその場に居残っていた玉虫元伯爵に姿を見られてしまい、伯爵は、犯人が手にしていた雷神像を観て、占いのトリックとその犯人を悟ってしまった為、その場で殺されたのだ。

犯行後は、再び、伯爵の血痕で、赤い紋章を白砂の上に記したのだと言う。

淡路島で妙海尼を殺害したのは、英輔のそっくりさんだった飯尾豊三郎。

その頃、二階の寝室で目が覚めたあき子は、何も知らずふらふらと下に降りて行く。

応接間にやって来た金田一は、先程、あき子が驚いた真相を明かす為、その時と同じ位置に皆を座らせ、あき子の席には美禰子を座らせた上で、もう一度、三島に鏡の前でシャツを着替えてもらう。

鏡を観ていた美禰子には、裸になった三島の背中の肩の部分が写って見えたが、そこには新宮利彦と同じ「悪魔の紋章」の痣があった。

君は河村治雄だね、本物の三島東太郎は、昭和19年陸軍病院で死んでいる…と金田一が三島に問いかけると、三島はおとなしく、自分は植辰こと河村辰五郎の息子であり、本当の父親は新宮利彦だと答える。

つまり、一彦の異母兄弟の兄に当ると言うのだ。

その告白を、ちょうど応接室の外にやって来て聞いてしまったあき子は、 そっと自室に戻り、夫の日記の中の悪魔の紋章の記述の所を観ると、静かに着替えはじめる。

三島こと、河村治雄の告白は続いていた。

その美禰子の髪の方に手を伸ばし、側にいた金田一に制させた河村治雄は、一度で良いから、妹と呼びたかったと手を引っ込める。

さらに、最後に、母親に挨拶をしたいとと言うので、信乃が二階に様子を観に行くと、椿の絵柄の着物を羽織ったあき子が部屋に横たわっているのを発見する。

お種が「奥様が!」と駆け込んで来たので、異変を感じた全員は二階に向う。

そこに、日和警部がやって来て合流する。

あき子の死体の側には遺書が置かれており、覚悟の自殺と思われた。

河村治雄は美禰子に、自分は新宮が実の妹であり、君の母親であるあき子を犯して生ませた子なのだと伝える。

つまり、二人の父違いの兄妹でもあったのだ。

自分は生まれては行けない子供だったので、すぐに植辰の子供として預けられたが、中学生になった時、自分の出生の秘密を、妾の口から教えられたと言う。

復員して来て、植辰の娘、駒子と会った時、両親を呪ったと続ける。

自分も親父と同じ道を歩んだ事を知ったからだった。

治雄は生涯に一人だけ愛した女がいた。

それが小夜子だった。

昭和18年6月、出征する直前、自分の子供を妊っていた彼女とお宮参りに出かけた治雄だったが、その小夜子も、利彦が駒子に生ませた子だったのだ。

つまり、二人は、知らずに、兄妹で子供を作ってしまった事になる。

それを知った小夜子も嘆き、海に入水して自殺したと言う。

自分はここへ復讐のためやって来たのであり、椿英輔子爵は自分を突き放す事が出来なかったし、三島の名前を使うよう勧めたのも彼だったのだ。

英輔を警察に売る密告状を出したのも自分であり、神戸のドイツ陣経営の会社で働いていた事があると言う。

目賀博士を殺したのは、ちょうど飯尾豊三郎を殺して屋敷の池で手を洗っていたのを、いつもより、30分も早く散歩に出て来た彼に姿を見られてしまったからだ。

こんな自分だが、生んでくれた女は母親と呼びたいし、相手にも自分が息子だと教えたからと告白は続く。

金田一は、あき子が遺した遺書を読ませようとするが、治雄が拒否したので、代わりに受取った美禰子が読みはじめる。

今の私には、死の中にこそ安穏の地を見つける事ができる…と、記されていた。

一度で良いから、わが子をこの胸に抱きたかった…とも。

それを聞いていた治雄は、あき子の部屋の箪笥の中からなくなっていた黄金のフルートを取り出すと、自分の指先を良く観ていてくれと言いながら、「悪魔が来たりて笛を吹く」の曲を奏ではじめる。

その左手の様子を観ていた金田一は、この曲が、中指と薬指を使わなくても吹ける曲だったのだと言う事を知る。

その曲を静かに吹き終わった治雄は、吹き口をちょっと回転させ、その部分を嘗めると、その場に倒れ込む。

あらかじめ、その部分に毒が塗ってあったのだ。

事件が解決し、屋敷を離れる金田一に、日和警部が、美禰子はこの椿邸を処分すると話していたと教える。

どうして、三島の正体に気づいたのかと聞く日和に、美禰子から借りた「ウィルヘルム・マイステルの修行時代」と言う本を読んだら、それに兄と妹が知らずに愛しあい子供を作る悲劇が書かれていたと金田一は説明する。

その直後、思わずくしゃみをする金田一に、日和警部は、誰かが噂しているのだろうとからかうのだった。

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▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

「犬神家の一族」「本陣殺人事件」「三つ首塔」に続き、「横溝正史シリーズ」として放送された古谷一行主演の金田一ものの中の4作目に当る。

正直、この作品は、岡山等を舞台とするおどろおどろしい伝奇風のストーリーではなく、東京の元華族の家の中で起こる密室殺人が中心となるだけに、全体的に、若干、ケレン味に乏しい地味めな展開となる。

画面的に変化があるのは、須磨や淡路のシーンであるが、ここでも特に派手な惨劇はない。

単調と言えば単調、地味と言えば地味そのものの内容である。

それでも、今、観ると、当時の懐かしいキャスティングで、ついつい最後まで付き合ってしまう出来となっている。

刑事の一人を演じているのは、「ウルトラセブン」のモロボシダンこと森次晃嗣、須磨の旅館「三春園」の女将は、「男はつらいよ」シリーズのおばちゃん事、三崎千恵子、その女中を演じているのは「ハレンチ学園」の児島美ゆきである。

その他にも、あき子役は、東宝の石坂金田一ものの常連、草笛光子、さらに、原泉、吉田義夫、加藤嘉や長門裕之、長門勇などの渋いベテラン陣がしっかり脇を固めている。

中山真理演ずる妖艶な菊江と、清純なイメージの美禰子を演じている壇ふみの対象等も面白い。

一彦を演じている星正人は、さしずめ今なら、ヒーローものの主役をやっていてもおかしくないような、なかなか爽やかな好青年なのだが、この作品の後、あまり芽が出ない内に芸能界から身を引いてしまったらしい。

この手の映像作品の通例通り、犯人は、当時の俳優のポジションと言うか、人気度を知っているものには、冒頭の人物紹介のキャスティングを観た段階で自然に分かってしまうと思う。

ちょっと気になった点と言えば、金田一が、風神像の判子のトリックを明かすシーン。

金田一が実際に押してみた白砂には、炎の模様の廻りに、くっきり判子の外周の円が残っているが、事件当夜にはそんな円はなかったはず。

映像上、仕方ないと言ってしまえばそれまでだが、外周の円を遺さないやり方もあったのではないかと惜しまれる。


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