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幻の怪獣アゴン

テレビ用作品として作られながら日の目を見なかった幻の怪獣映画である。

アゴンの造形は、後の「マグマ大使」に登場したアロンにシルエットやのど元が動く仕掛けなども似ているのだが、腹の部分などの作りが明らかに違って入り、両者は別物だと分かる。

アロンの方が格段に造形は緻密になっている。

なぜお蔵入りになったか?と言う理由は分からないが、内容的にもこれまで色々怪獣映画や番組を見て来た目で見ると、ありきたりな展開な上にテンポも遅く、正直あまり面白いとは言えない。

テレビ映画としてはエキストラシーンなど頑張っている方だと思うし、本物の戦車部隊が登場したりする所など、おお!と驚くような見所もないではないが、初期ゴジラの焼き直し以上のものではなく、酷くつまらないと言う程でもないのだが、凄い傑作!と言うような感じではなく凡作と言った印象。

50年代後半くらいの作品ならこれでも大丈夫だっただろうが、ウルトラマンなど巨大ヒーローがブームになる頃での単独怪獣ものは弱い気がする。

製作自体は1964年頃らしいが、その頃でもこれはインパクト不足だったような気がする。

新聞記者と科学者の助手の関係性などもありきたりで古くさい印象がある。

キャスティングもいくらテレビ向けとは言え華がなく、イケメン松本朝夫さん演じる大和刑事はあまり活躍しないし、実質上の主役を演じている新聞記者役の人は無名すぎて魅力にも乏しい。

後半、五郎が本職の刑事を差し置いて麻薬を扱ったり、子供や核燃料強奪事件に関しては、大和刑事らが事件を知った後も全く動いてないなど不自然さも気になる。 子供が小舟に取り残される経緯も不自然に感じる。

海育ちの子供なんだから、小舟が動き出したとき自分で船から降りれそうに思えるのだ。

子供が枷となり、防衛隊がうかつに攻撃できないサスペンスフルな設定にしたかったのだろうが、小舟をくわえたまま噛み砕くでもなく、その後ずっとそのままのアゴンの行動も奇妙に見える。

ただ、絵的に小舟をくわえているアゴンは後のミレニアムゴジラを連想させ、興味深い部分もある。

アゴンを前にして、ただ見守るだけの棒立ち芝居しかしていない役者陣たちへの演出も単調なだけで工夫がなさ過ぎる。

大和刑事を演じている松本朝夫さんは元々新東宝の出身らしく、テレビ「ウルトラセブン」の「緑の恐怖」など特撮番組でもお馴染みだった方である。

ベテランらしくセリフもはっきりしており、古い作品なのに今でも聞き易い。

製作の日本電波映画と言う会社は京都の映画会社だったらしいが、テレビ創成期、「琴姫七変化」や「宇宙Gメン」と言ったTVドラマも製作しており、それらの作品も見ていた記憶がある。

ただ時代劇などはともかく「宇宙Gメン」のようなSFものは面白かったと言う記憶がない。

この作品もあえて怪獣ものに挑戦した意欲は買うが、成功作とは言いがたいような気がする。

しかし、お蔵入りになったと言うのは惜しく、放映されていればそれなりの反応もあったはずで、その後の新展開に期待で来たのではないかと言う気もしなくもない。 
▼▼▼▼▼ストーリーをラストまで詳細に書いていますので、ご注意ください!▼▼▼▼▼
1968年、日本電波映画、関沢新一、内田弘三脚本、峯徳夫+大橋史典監督作品。

我々は第三の火を得た事によって輝かしき未来の反映を約束された…

然し そのためにもう一つの扉をノックした事を忘れてはならない

タイトル

ビルを壊し、火を吹くアゴンの姿

雨の中、走る原子力研究所の車が突然の崖崩れに遭遇する。

新聞社の社会部に電話が入り、台風3号が日本縦断し、日本海海上で温帯性高気圧になったとの電話とポテトが値上がりをした電話の両方を聞いていたデスクは、忙しく電話対応している記者達の広報からのこのこやって来た記者がお早うす!と挨拶して来たので、怒鳴りつけようとするが、それを封ずるかのように、たんま!まあ落ち着いて、落ち着いてとデスクをなだめるように言いながら近づいて来た記者須本五郎(広田進司)は、怒鳴ると血圧に悪いですよと先を制する。

馬鹿野郎!どこで油を売ってやがった?とデスクが叱ると、記事は足で書け…つまりこれですと言いながら、記者はスーツの内ポケットからメモ用紙を取り出すと、スッポンの五郎、食いついたネタは話さないですと言う。

夕べ台風の中で、ウラン運搬車が海中へ落ちて行方不明になっているんです。運んでいたものが放射性物質、原子力センターでは警察と一緒に内密で捜査を始めていますと五郎が耳元で言うので、他は?とデスクが聞くと、まだ…つまり特ダネ!と五郎はすっとぼけたように言う。

海辺の岩場では、ガイガー計を使ってなくなった運搬車の捜査を科学者達が行っていた。

そこにやって来た警視庁科学Gメン大和刑事(松本朝夫)が原子力センター右京先生(志摩靖彦)にガイガー計にに反応はありませんか?と話しかけると、だめだね、こりゃ…と右京博士は諦めたように言うので、何か手がかりになるようなものがあれば良いのですがねと大和刑事は言う。

やっぱり沖に流れ出したのかな〜?と右京博士が海の方を見たとき、何やら不気味な鳴き声のようなものが聞こえる。

そこへのこのこやって来たのが五郎記者で、毎朝新聞の洲本五郎、人呼んで「すっぽんの五郎」と自己紹介をする。

すっぽん?と大和が不思議そうに聞き返すと、そう、食いついたら離れないと五郎は答え、ありましたか?と聞くと、あったよと言いながら、大和刑事はタバコのライターを取り出してみせる。

とぼけちゃ困るな…、つまり、人目を避けて探しているもの…、台風で行方不明になったウランX!と五郎は言い当ててみせる。

ん?と大和刑事が睨んで来たので、当たった!と言いながらカメラで刑事と博士の写真を撮った五郎は、どこでそれを?と聞かれ、だから言ったでしょう、スッポンの五郎、並みのブンヤじゃないってと五郎は愉快そうに答える。

大和君、相手が悪いと右京博士が言うと、食らいついたら怪物ですと大和刑事も愉快そうに答える。

その時、また不気味な鳴き声のようなものが聞こえたので大和刑事の表情がこわばる。

君、動物園でもあるのかね?と大和刑事が警官に聞くと、いやあ、天狗の大ボラですじゃ、この先にでかい岩穴がありましてな…、中は迷路のようで、吹き抜ける潮風がぶつかり合ってああいう音を出すんだそうですと警官が教える。

と言う訳で、それは天狗が大きなホラ貝を吹きよると言う伝説がありまして…と教えながら警官が3人を岩穴に連れて来ると、なるほどね…と言いながら五郎が岩穴に入ろうとするので、慌てて警官は止めようとするが、まさか天狗が住んでいる訳ないでしょう、現代は科学万能の時代ですよと五郎は答え、じゃあちょっと!と言い残し、警官を置いて穴の中に駆け込んで行く。

それを愉快そうに見ていた大和刑事は、我々はどうしますか?海の底でも探しますか?と右京博士とともに海の方へ戻って行く。

その時、岩穴の中から、助けてくれ〜!と叫ぶ五郎の声が聞こえて来たので、警官と右京博士、大和刑事は何事かと岩穴の方を振り返る。

さらに、助けてくれ〜!と二度声がしたかと思うと、五郎が飛び出して来て、出たんですよと言い出す。

落ち着くんだと右京博士がなだめ、天狗様か?時計感が聞くと、一つ目のお化けだと五郎は言う。

一つ目の化け物?おいおい科学万能の時代と言ってたんじゃなかったのかい?と大和刑事がからかうと、右京博士が岩穴の中に光る一つの目のようなものを見つける。 警官と大和刑事も、うなり声のような声と光る目を緊張しながら凝視する。

警官は腰から拳銃を抜き、五郎は洞窟の方へカメラを向けて出て来るのを待ち受ける。

同じく拳銃を出して警戒していた大和刑事が警官に待て!と命じる。

やがて穴からで手来たのは、紋太(小林芳宏)と言う少年で、警官が声を掛けると、持っていた棒を捨て、もう一方の手に持っていた懐中電灯を何故か背中に隠す。

とんだお化けだったな…と右京博士は五郎に笑いかける。

人騒がせな、この村の小で、村一番のガキ大将でさ…と警官は銃をホルダーに仕舞いながら少年に近づくと、紋太、何しとった?と聞く。

すると紋太は、探検!と言うので、天狗いたかい?と五郎が聞くと、頭古いな〜、科学時代だよ、現代は、天狗なんていっこないじゃないかと紋太は呆れたように答える。

じゃあ、何の探検かね?と右京博士が聞くと、何も分からないから探検するんじゃないかと紋太は当然のように答える。

一本参ったな!と右京博士は笑い出し、坊や、その懐中電灯はどうした?と大和刑事が聞くと、僕んちのだよ!と紋太は慌てたように懐中電灯を背中に隠す。

じゃあ、ちょっと見せてくれんかね?と大和刑事が手を伸ばすと、僕んちのだよといいながら紋太は懐中電灯を渡すまいとする。

紋太!本当か嘘か、おっ父に尋ねるぞと警官が言い聞かせると、今朝拾ったんだよと紋太は返事を言い換える。

さ、早く見せてご覧と大和刑事が少し強い口調で言うと、紋太は渋々と言った感じで懐中電灯を渡す。

その懐中電灯には「原子力センター」の文字がはっきり書かれていた。 坊や、どこで拾ったんだ?と右京博士が聞くと、紋太は前方を指差し、そこだよ、そこの岩の所に落ちてたんだよと言う。

じゃあやっぱり運搬車はこの上から落ちたんですね…と大和刑事は岩場を見上げる。

その時、五郎は近くにおいてあったガイガー計の針が大きく触れているのに気付き、博士!さっきまで何も異常はなかったんですと伝え、まさか急に放射能が増える訳はないでしょうと大和刑事に問いかける。

その時、紋太が海の方を指し、あれ!と指摘する。 大人達も海を見ると、海面の一部が波立っていた。

その波の中心部分の海面が盛り上がったので、あれは何だ!と五郎が叫ぶ。

恐竜の頭のようなものが海面から出現したので、五郎は紋太を岩から抱き下ろすと、懸命にカメラで怪物の姿を映し出す。

怪物は吼え、大人たちは岩場に身を伏せる。

ガイガー計の針が振り切れるように大きく反応していた。

「怪獣 磯浜海岸に現る!」「恐竜の一種か?」輪転機が回り、新聞が次々と印刷され、飛ぶように売れて行く。

大和さん、奴の動機は何ですかね?オープンカーを運転し、助手席に大和刑事を同乗させて国立原子力センターへ向かっていた五郎は聞く。

奴?と大和刑事が聞くと、怪獣ですよ、何も今更出て来なくても良さそうなものだが…と五郎が言うので、文句があるんなら奴に言う事だなと大和はからかう。

車が原子力センターに近づいたとき、道に犬が座って動かないでいるのを見つけたので、五郎はクラクションを鳴らして追い払おうとする。

愚連隊みたいだな!とぼやきながら車を降りた五郎に、愚連隊はあなたじゃありません?と声をかけて来たのは笑顔の女性だった。

僕が愚連隊?変な事言うなよと五郎が不満そうに言うと、でもゴローがそう言ってますもの、この犬の事ですわと女性は犬を見て言う。

君は犬の学校の先生か?と五郎が絡むと、先生じゃなくても分かります、常識ですものと女性はすまして答える。

常識?とタバコを口にしたまま絡む五郎に、原子力施設が禁煙だって事くらいわねと女性は答える。

そんな事分かる訳ねえじゃないか!と五郎は言い返すと、じゃあ試してご覧なさいと女性は言う。

五郎がヤケになってタバコを捨て靴で踏み消すと、今まで動かなかった犬が歩き出したのでさしもの五郎もあっけにとられる。

笑って、お前さんの負けだ、さ、行くぞと助手席にいた大和刑事が声をかけながら運転席に移って車を走らせたので、待ってくださいよ!と五郎は慌てて後を追って行く。 それを笑いながら見送る女性。

国立原子力センター内の右京研究室に到着した大和は、終始そわそわしている五郎に、ちょっと落ち着いたらどうなんだいと声をかける。

君の負けだ、吸っちゃいけない所で吸ったんだからなと大和が言うと、分かっちゃいないんだな!僕が不覚なのはよりによってあんなノラ犬にゴローなんて名前を…と言うので、そう言えば君の五郎だったなと大和は愉快そうに笑い出す。

そこに右京博士が来たので、博士、何事ですか、僕たちをお呼びになったのは?と大和刑事が聞くと、うん、アゴンのことだがね…東京博士が言うので、アゴン?と大和は聞き返し、顎んって、あの怪獣の事ですか?と五郎も確認する。

そうだ、わしの友達の動物学者が調べた所では、ジュラ紀に地上に繁殖した恐竜の一種が突然変異したらしいんだと博士はアゴンの写真を取り出して答える。

しかし恐竜と中生代の動物は死滅したはずでしょう?と大和が聞くと、だが確かに我々はこの目で見た!と右京博士は断ずる。

となると、海底に眠っていたとしか考えられない訳ですね?と五郎が指摘し、でもそんな事ってあるんですか?と問いかける。

イギリスのネス湖にも前世紀の怪獣が住んでいたと言われている。地上にはまだ分からない事が数多くある…と右京博士は答える。

じゃあ、もう一つ、その突然変異の原因はなんだと思いますか?と五郎が聞くと、確証はないがね…と断りながら、考えられるケースとしては原水爆による突然変異…と右京博士が言うので、なるほど、当然考えられますねと大和刑事も納得する。

つまりアトミック・ドラゴン…、それでアゴンですか…と、五郎が名前の由来を推測しながら煙草をくわえようとする。

すると、ここも禁煙ですよと声をかけて来たのは、先ほど道で出会った女性静川さつき(沢明美)だったので、五郎は、君は!と言いかけ唖然とする。

静川くん、知っているのかね?と右京博士が不思議がると、いいえ、私の事、犬の学校の先生だと思ってらっしゃるんですもの…と言いながら、白衣のさつきは答える。

右京博士は、紹介しよう、わしの助手で静川さつき君と大和刑事と五郎に教える。

どうぞ宜しくと挨拶したさつきは、電話がかかって来たので受話器を取ると研究室ですと応答する。

ウラン格納庫のチャックメーターが変です、すぐ来てください!と研究員が報告して来たので、」えっ!何ですって?とさつきは驚く。

おかしい!とメーターの異常警報を見ながら右京博士が首を傾げると、燃料ウランには異常はありませんとさつきが指摘する。

じゃあ博士、この警報は何ですかね?と一緒に監視ルームに来ていた五郎が聞く。

そうだ!分かるか?はい!これは…、ひょっとすると…、ひょっとするよと大和と五郎は頷き合う。

何ですの?とさつきは2人の会話に戸惑うが、静川君、ガイガー計だ!と右京博士が命じる。

ガイガー計を持ったさつきら研究員も含め、右京博士、大和刑事、五郎達は近くの海岸に向かう。

さつきがガイガー計のスイッチを入れると、大きく針が振れる。

海面が大きく盛り上がったのを見た右京博士は、防衛隊に連絡だ、原子力センター海岸にアゴン出現!とさつきに指示する。

やがてアゴンが不浄、右京博士は研究員達に退避を命じるが、何人かが押し寄せて来た津波の波をかぶる。

連絡のため先に走っていた五月が転ぶ。 上陸して来たアゴンは海岸縁の木々を押し倒して来たので、研究員達の頭上に枝葉が落ちて来る。

足をくじいて立ち上がりかけた五月の頭上に木が倒れかけ、彼女の足の先が倒木に挟まれてしまう。

足が抜けず動けないさつきにアゴンが迫る。 原子力センターに警報サイレンが鳴り響く。

建物から逃げ出して来る所員達。 全員避難が終わりましたと言うガードマンに、静川君はどうした?と五郎が聞くと、戻ってきませんと言うので、カメラを預けて助けに行く五郎。

その頃、さつきの側に接近していたアゴンが地面を踏みしめると、地面がひび割れ、さつきはその地割れの中に落ちてしまう。

林に駆けつけ、さつきさん!と呼びかけながら探していた五郎は、地割れのそこに倒れていたさつきを発見する。

そこに、大和刑事も駆けつけて来る。

大和さん、ここです!と答えた五郎の声で、地割れの下にいた五郎と気絶したさつきを見つけた大和刑事は、向こう見ずにもほどがあるぞ!と叱りつけながらも、向こう見ずに警察はつきものだからなと呼びかける。

気絶したさつきを肩に背負い、地割れに露出した木の根と大和が差し出した上着を手がかりに何とか地上に上がった五郎だが、休む間もなく、さつきを抱き上げた大和に促され、まだアゴンが暴れ回っている松林から逃げ出す。

やがて、アゴンとは離れた場所にやって来た大和刑事は抱えていたさつきを降ろし、五郎が呼びかけると、気がついたさつきが五郎に抱きついて来る。 アゴンは原子力センターを破壊し始める。

足をくじいていたさつきを抱きかかえ、松林から戻っていた五郎と大和は、そこに近づいて来た右京博士達が乗ったジープに遭遇する。

右京博士は原子燃料を積んだ車を先に行かせ、さつきをジープに乗せた後、出発する。

原子力センターはアゴンに完全に破壊し尽くされ、原子炉も破壊される。 その様子を停止したジープから見ていた大和刑事が、博士、アゴンは原子炉の爆発によってお陀仏でしょうな…と指摘すると、ざまあみろ!ああいうのを自業自得と言うんですよと五郎が言う。

しかし右京博士は、さあ…、どうかな?と答える。

それを聞いた五郎が、どうかな?って…、違うんですか?と博士に問いかけると、軽々しく断定は出来ぬと言うんだと右京博士は言う。

それでも五郎は、どう見ても最期ですよ、あれは…と悔しそうに反論すると、いや、自業自得は案外、我々人間かも知れないよ…、まだ断定は出来んと思うがな…と右京博士は真顔で答える。

それを聞いた五郎は、どうも科学者はまどろこっしくていかんよと席を立って大和の横に座って、ズバリと意見を聞くと、わからん!と大和も答える。

原子炉の爆発によって、その生命を絶つのであろうか? アゴンの生命の人智に付いては誰もしらない… 防ぎようのない不安と困惑の中で、残念ながら我々はただ時を待つ他手はないのである(とナレーション)

後日、病院へオープンカーで乗り付けた五郎は、花束を持って、入院していたさつきを見舞う。

すると、さつきがベッドに腰掛け本を読んでいたので、五郎が寝てなくちゃダメだななどと注意すると、私はそんな大病人じゃなくってよとさつきも言い返して来る。

もう入院して何日にもなるのよとさつきが退屈そうに言うので、じゃあ歩けるのかい?と五郎が聞くと、無理に絶とうとしてだまよろめいたさつきは五郎に抱きついてしまう。

花を渡すと、ありがとうと言って受け取ったさつきが、立ち上がって花瓶に入れようとするので、たんま!名誉の負傷者はそのままとねぎらい、五郎が花瓶に花を入れてやる。

ねえ五郎さん、お見舞いはありがたいけど、こんな時間に油を売ってて良いの?とさつきが心配すると、良いニュースだ、奇跡が起こったんだと五郎が言うので、じゃあ、アゴンは死んだの?とさつきが聞くと、いやあ、そこまでは分からないんだけどさ、アゴンの奴、原子炉の爆発でダウンしたと五郎は報告する。

しかしそれを聞いたさつきがそうかしら?と疑問を口にしたので、君も博士の助手だけあってあまり素直じゃないなと五郎は呆れる。

でもこれで現れないと言う科学的根拠は何もないじゃないのとさつきは理路整然としてことを言う。

いやあ、新聞記者は現実を見つめれば良いんだよ、そしてそれをありのまま書く、かつ迅速に報道すると五郎が答えたので、まあ、現実的ねとさつきは笑う。

その通り!だから用がなくなれば花束を持って、油を売りに来るって分けなんだ…とタバコを吸いながら五郎は答える。

その時、病室の電話が鳴ったので、つい受話器を取り、社会部ですと答えてしまった五郎は、かけて来た相手がデスクと知り驚く。

馬鹿野郎!何、油売ってやがるんだ!とデスクは怒鳴って来たので、聞こえてたんですか?と五郎は聞くが、うるさい!と一喝されてしまう。

これが怒鳴らずにおられるか!この後重大発表があるのを知っているか!とデスクが言うので、五郎は本当ですか!と驚く。

記者会見場に車で向かった五郎は、博士の重大発表は?と玄関口にいた他社の記者に聞くと、今、すんじゃったよと言うので、畜生!と出遅れた事を悔やみながら五郎は建物の中に飛び込んで行く。

外国人達が談笑していた会場内で右京博士を見つけた五郎は、博士!と呼びかけるが、何だ、すっぽんの五郎かと言われたので、ひでえな…ずいぶん探したんですよと五郎は愚痴る。

何かな?と右京博士が言うので、またとぼける…、重大発表ですよ、もう一度だけお願いしますと五郎がねだると、そう大げさなものじゃないよ、僕個人の所信表明だ、学会の意見じゃないと前置きした右京博士は、団体でも個人でも良いんですよ、こっちは聞きさえすればと五郎は言いながらメモの準備をする。

スッポンの五郎、ものにしないうちは離れそうにもないな…と呟いた右京博士は、君はこの前自業自得だと言った事があったね?と切り出す。

自業自得?あ、アゴンの事ですか?と五郎が気付くと、今でもそう思ってるかい?と右京博士が聞くので、そりゃもちろんですよと五郎が頷くと、僕はそうは思わんのだと右京博士は言う。

じゃあ、どう思ってるんですか?と五郎が聞くと、科学的に証明できないから、あくまでも僕の想定だがね…と前置きした右京博士は、アゴンの出現は放射能のよる突然変異だと仮定する。

放射能を浴びたポテトが異常発育を起こしたように、アゴンも我々人類が現在まで幾度となく行った原水爆の実験のショックで生命を蘇らせたと考えられる。 そればかりではない。

我々は不要になった放射能材の捨て場を深海に指定し棄てて来た。

生命を得たアゴンはそれでますます成長した。

つまり自業自得はアゴンではなく、我々人間だと言う事だ。

原子力で第三の火を得たが、世紀の怪獣をも蘇らせたと言う事だと右京博士は言う。

じゃあ、アゴンは又現れるって言うんですか?と五郎が聞くと、右京博士はうんと即答し、だからこちらにお願いに上がったんだと、目の前に座っていた2人の人物を指して言う。

防衛対策はどうなているんですか?と制服を着た2人に五郎が聞くと、アゴンの相手では検討もつきかねますがね、しかし防衛は我々の任務ですからあらゆる手段を取るつもりですと防衛大臣は答える。

そして相手の出方を待つか…と五郎は独り合点し、これはちょっと見物ですねとのんきそうに右京博士に話しかける。

すると博士は、油断は出来ない、ウラン物質がある限り…と表情を引き締める。

ウラン物質?と五郎が聞くと、そうだ、アゴンはウラン物質をエネルギーとしている。

つまり分かり易く言えば我々がパンを食うように、燃料ウランがある限り、アゴンは必ず襲って来るだろうと右京博士は断言する。

防衛隊員と戦車部隊がガードする中、ウラン燃料を積んだ車が停まっていたが、そこにジープでやって来たのは、右京博士や五郎達だった。 そこに大和刑事も来てたので、五郎は嬉しそうに声をかける。

その時、偵察用のジェット機も空を飛び去って行く。 目下海面異常なし!とパイロットが本部に報告する。

その頃、海では漁師の松造(入江慎也)が息子の紋太と2人で小舟に乗り漁をしていた。

しかし網を引き上げても獲物が1匹も入っていなかったので、松造が不思議がると、お父、この辺は魚が一杯いる所じゃなかったのかい?と紋太も首を傾げる。

漁師も上がったりだ…と松造が嘆くと、どこに行ったんだろう?魚は…と紋太が呟く。 ねえ、お父…とせがむと、バカたれ!わしに聞かず、魚に聞け!と松造は叱る。

その時、突然、小舟の側の水が盛り上がり、小舟が揺れ始めたので、お父!どうしたんろう?と紋太が船にしがみつきながら聞くので、いちいち聞くなよ!と同じく船につかまった松造は困惑する。

くじらじゃねえのけ?と紋太が言うと、クジラがこんな所まで来るか!と松造は答える。

その時、上空を偵察中のジェット機から、アゴン出現!と連絡が入る。

連絡を受けた本部通信係から、戦車隊の側にいた大和刑事の車に連絡が来る。

戦車隊が出撃し、アゴンは上陸する。

ジェット機が編隊でアゴンに攻撃を開始するが、アゴンは口から炎を吐き、ジェット機を落とす。

地上から砲撃も開始される。

アゴンが目指しているのは、右京博士らが守るウラン燃料を積んだ車だった。

博士、アゴンが海岸の防衛戦を突破しました!と大和刑事が右京博士に伝える。

ね、どうするんですか?と五郎も博士に声をかける。

アゴンに防衛軍の武器は効かず、アゴンの炎で戦車隊も焼かれてしまう。

そんな中、良し!と何かを思いついたらしき右京博士はジープに乗り込むと海岸だ!と目的地を告げたので、一緒に乗り込んだ五郎は、冗談じゃないですよ!アゴンはこっちに向かって来るんですよ、逃げるんなら山奥ですよと声を掛けるが、博士は海岸だと言いはる。

博士達が乗ったジープと一緒にウランを積んだ車も海岸に向かう。

走るジープの上で、五郎は海と山を間違えてるんじゃないですか?ともう一度念を押すが、海だ!嫌なら降りて良いんだぜと同情した大和刑事に言われると、嫌だ!僕もすっぽんの五郎と呼ばれたブンヤだ!死んでも離しませんよと五郎はごねる。

ねえ、何か勝算があるんですか?と五郎が聞くと、さあ、勝てる見込みはない。

しかしこれ以上放っといたらアゴンの被害はますます大きくなると右京博士は答える。

やがて海岸近くに来た五郎は、アゴンを発見する。 アゴンは岬の燈台を破壊していた。

これからどうなるんですか?と五郎が聞くと、アゴンを止めるのはここに積んである原子燃料だと右京博士は毅然として言う。

勝つ事は難しいが一応混乱を防ぐ事は出来るはずだと博士は続ける。

誰が受け渡しするんですか?と五郎が聞くと、もちろん僕たちさと博士が答えたので、そんな馬鹿な!と五郎は驚く。

大和君と博士が声を掛けると、大和刑事がウランを積んだ車の方へ駆けて行ったので、どうするんですか?と五郎が聞くと、海の中に突っ込ませるのだと右京博士は言う。

大和刑事は運転席から身を乗り出し、ウランを積んだ車を海に向かって走らせ途中で自分は飛び降りる。

車はアゴンの足下の海に突っ込んで行く。 アゴンはその車を海中から拾い上げ去って行く。

それを見送った五郎は、やれやれ、これでどうやら片がつきましたねと安堵する。

しかし右京博士は、安心は出来ない、アゴンはきっとまた現れると断言する。

何とか防げないんですかと、その場に戻って来た大和刑事が聞くと、 ない…、と言ってすまされる問題ではないと右京博士は深刻な顔で答える。

人類のために何とか防衛の手がかりを見つける。これが今後我々がやらねばならない問題だと博士は続ける。

海にアゴンが身を沈めると海面が渦を巻く。(つづく…の文字)

荒れる海で翻弄される小舟に乗った2人の男の姿をバックに「風前の灯 前編」のタイトル

その小舟が転覆する。

松造の家の戸を叩き、開けてくれ!と呼びかける声がするので、どなた?と松造は聞く。

外の男は、船で遭難したんだ、開けてくれ!と呼びかけて戸を叩き続けるので、かんぬきを外し戸を開けてやると、2人組の男が濡れ鼠の状態で飛び込んで来たので、松造は、どうしたんだ?と聞く。

一晩泊めてくれねえか?恩に着るぜと2人組黒田(福山象三)と鉄(野崎善彦)は言うので、困った時はお互い様だと松造は泊めてやる事にする。

濡れた服を脱いでいた太った方の黒田の身体から拳銃が転がり落ちたので、黒田は慌てて拳銃を拾い上げると服の中に隠す。

こんなものしかねえけど…とタンスをあさっていた松造が着物を提供し、囲炉裏の側に招き上げる。

御前さん達はどちらから?と松造が聞くと、東京ですよと黒田が答える。

ところでおっさん、この辺に海に潜るにが得意な人はいないかな?と鉄の方が聞いて来る。

俺でも潜れるが、何だね?と松造が聞くと、兄貴、都合が良いじゃねえかと鉄が黒田に話しかけると、ま、その話は明日の様子を見てしようやと黒田は言う。

翌日、「日本原子燃料研究所」にオープンカーでやって来たのは五郎。

ちょうど右京博士とさつきは仕事中だったので、あら、五郎さん!とさつきが驚くと、そう迷惑そうな顔しなさんな、友、遠方より来る、また楽しからずやと五郎がちゃかすと、こっちはちっとも楽しくなんかなくてよとさつきは言い返す。

ま、何とでも言いたまえとさつきをいなした五郎は、あのね、博士、アゴンに関する面白いネタはありませんかなどと気軽に聞くと、君、わしの後を追いかけて歩いても何もでてきやせんよ、それより釣りでもして歩いた方がよっぽど利口だねなどと右京博士は言い聞かせる。

ちぇ!助手が助手なら博士も博士か…と五郎はからかうように言うと、うん、ま、良いでしょう、でもね、スッポンの五郎、そう簡単には引き下がりませんよ…と付け加える。

その頃、松造は昨日泊めてやった黒田と鉄を小舟に乗せ、引き上げを頼まれた場所へ向かっていた。

あの岩場の辺りだと黒田が場所を教えると、あそこは深い所だな〜と松造は船を漕ぎながら難しそうな顔をする。

礼はたんまり弾むぜと黒田がおだて、引き上げるものって何だね?と松造から聞かれた黒田はトランク一個だと教えると、ちくしょう!ボートがひっくり返ってなきゃ今頃は…と鉄が悔しがるのをで、横に座っていた黒田は、おい!と黙らせる。

目的地につき、ふんどし一丁の裸になった松造は、身体に命綱を巻き、これをぐいぐいっと引いたら引き上げてくれと頼むと、黒田は分かったと承知する。

海に飛び込んだ松造は、海底に沈んでいたトランクを発見、側に近づこうとするが、その時、海底に潜んでいたアゴンを発見する。

船に引き上げられた松造は、あったか?と鉄から聞かれると、早く逃げるんだ!と忠告する。

おっさん、何をとぼけたことを言ってるんだ、トランクはどうした?と黒田が睨みつけると、トランクどころじゃねえ、怪物だ!と松造は怯えた顔で答える。

ありゃ、アゴンに違いねえと松造が言うと、何!アゴン?と黒田は驚く。

新聞の写真で見たのとそっくりだと松造が言うと、おっさん、そりゃ本当かい?と鉄が確認するが、怯えた松造は早く逃げるんだ、ぐずぐずしていると下から出て来るぞ!と言い、櫂を持とうとする。

すると黒田が、おい!嘘じゃないだろうな?と松造の手を握って確認して来る。

誰が嘘を言うもんか、この目で見たんだと松造が言うと、トランクはどこにあった?と黒田が聞くと、アゴンの足下にあった。

手を出す所じゃねえと松造が言うので、アゴンの奴め…と黒田が悔しがる。

すぐ、村の衆に知らせなくちゃ…と松造は立ち上がるが、つまらねえ事はよしな!俺たちゃ騒がれたくねえんだ。

あのトランクを引き上げるまではなと黒田が言い出したので、松造は、えっ!と驚く。

おっつけ消えちまうよ、良いか?もう一度潜ってみるかと黒田が言うので、そんな無茶な…と松造が答えると、ズボンの中から拳銃を取り出し、命が惜しかったら言う事を聞くんだな…と黒田は脅して来る。

あれ!お前さん達は!と松造が驚くと、今日の事は誰にもしゃべるんじゃないぞ、分かったな!と黒田は念を押すと、岸に戻るんだと命じる。

その頃、海辺の岩場で釣りを楽しんでいた五郎とさつきの所に来た紋太は、そんな所じゃ何にも釣れないよと教える。

おい、紋太じゃないか!と気付いた五郎は、どこが釣れるのか教えてくれよと頼む。

すると紋太は、うん、おいらも釣り竿持って来るから、待っててくれる?と言う。

あれ?僕んちこの近所か?と聞くと、向こうの一本松の家だよと紋太は指差す。 その頃、自宅に戻って来ていた松造は、おとなしく座ってなよと鉄から脅されていた。

遊びに行っている子供が心配だと松造が言うので、ビクビクするねえ、アゴンは出て来やしねえよ、出て来るんだったらもう出て来てるはずだと黒田は言う。

その時、戻って来た紋太が、お父、釣りに行って来るよと声をかけて来たので、だめだ!出るんじゃねえぞ!と松造は止める。

どうして?と紋太は不思議がるが、その紋太を捕まえた鉄が、兄貴、仕事が終わるまで、この子供預かっとこうじゃないかと言い出す。

それを聞いた黒田も、なるほど、そいつは良い考えだと言い、おっさん、ご覧の通りだ、逃げたり、警察に届けたりすると、この子供の命は…、分かってるな!と松造を脅す。

何もそんな事までしなくても!と松造は黒田にすがりつくが、石橋は叩いて渡るのが俺たちの主義なんだと黒田は答える。

おじちゃん、離して遅れよ!と紋太は暴れるがどうする事も出来ない。

一方、磯で待っていたさつきは、紋太の帰りが遅い事に気付く。

俺ちょっと、迎えに行って来らあと言い、五郎が紋太の家に向かう。

一本松の家にやって来た五郎は、外から紋太君!と声をかけ、返事がないので、あれ?違ったかな?と迷いながら、家の戸を開け、そこの囲炉裏端に1人でいた松造に、紋太君のお宅ですか?と声をかける。

紋太君いますか?と聞くと、あんたは誰かね?と松造が聞いて来たので、カモメ荘に泊まっている新聞記者の洲本って言うんですが、紋太君帰ってきませんか?と五郎が言うと、いねえ!と松造は答える。

奥の部屋では、紋太の口を押さえた鉄と黒田が様子をうかがっていた。

そうですか…、おかしいな…、確かに帰って来たはずなんですが…と五郎は不思議がるが、いねえ、帰ってくれ!と松造が繰り返すので、やむなく帰ることにする。

奥の部屋から囲炉裏部屋に出て来て、表の様子をうかがった黒田は、新聞記者とは恐れ入ったぜとつぶやき、おいおっさん、良くしゃべらなかったなと感心してみせる。

子供は可愛いもんだよなと黒田が言うので、紋太をどうするつもりだ!と松造が詰め寄ると、心配するねえ、仕事が終わったらけえしてやると黒田は言う。

その後、又船で沖へ出た黒田達は松造に、もう一度潜ってみるんだと命じるが、座り込んだ松造が、アゴンがいるに違いねえと怯えるので、馬鹿野郎!いつまでもいるもんかよと鉄が叱りつける。

俺たちは急いでいるんだ!俺は気が短いんだぜと言いながら黒田は銃を取り出し、早くしろ!と急かす。 海から逃げようたってそうはいかねえよ、子供は俺たちが預かっているんだからなと鉄も松造に釘を刺す。

おめえ達は人間じゃねえ!と松造が怒ると、鉄がつかみ掛かったので、止めろ!と制した黒田は銃で早くしろ!と松造を海に入れる。

もう一度潜った松造だったが、船に引き上げられると、ダメだ!アゴンがいると言うので、黒田達は畜生!と悔しがる。

兄貴、どうする?と鉄が聞くと、このまま良いようにされてたまるか。アゴンを動かす手を考えるんだと答えた黒田は、ダイナマイトでもぶち込むかと言う鉄に、鉄、良い考えがあるぜ、アゴンが好きなものでアゴンを釣るんだ!濃縮ウランを使うんだと言い出す。

ウラン?でも兄貴、そんなものをどこから手に入れるんで?と鉄が不思議がると、この先の野原村に、確か原子燃料研究所があるはずだと黒田は言うが、その会話を船にへばりついていた松造も聞いていた。

その後、原子燃料研究所を見回っていた警備員が、床に倒れている男を見つける。

誰だ!と呼びかけた警備員の背後に忍び寄った黒田が殴りつけ、警備員は気絶する。

起き上がったのは鉄で、巧くいきやしたねと笑うと、早く鍵を取るんだと黒田が命じる。

警備員の持っていた懐中電灯と鍵を奪った2人は格納室に入り、鉄はさすがに、まさかドカン!と…と怯えるが、黒田は、その時はその時だと開き直る。 鉄は、金庫の中から燃料棒を一つ盗み出し、警備員を格納室に入れて外から施錠して逃げる。

翌日、連絡を受け駆けつけた大和刑事は、朝まで気付かなかったとはうかつだったなと警官と話す。

そこに取材に来ていた五郎が、大和さん、ホシの見当はつきましたか?と質問すると、全然…と大和刑事が言うので、一体何の目的があって盗み出したんでしょうね?と五郎も不思議がる。

全く人騒がせにもほどがあるよと大和刑事も困惑するが、そこへ現れたのが松造で、昨日はどうも…とすまなそうに五郎に挨拶して来たので、君か…と五郎はうんざりしたように答える。

あなた新聞社の方でしたね…、実はご相談したい事が…と松造が頼むと、あいにく今、手が離せないんだ、濃縮ウランの事でね…と五郎はすげない返事をする。

すると、待ってください、実はその事件の事で…と松造が言い出したので、それを聞いた五郎は、何だって!と驚く。

倅が人質になったんですよ、今度の事件の事をしゃべったと分かったら殺されてしまいます。

お願いです、あなたのお力で助けてください、お願いですと松造は言う。

それで、この事件とどう言う関係があると言うんですと側で聞いていた大和刑事が聞くと、それが…、岬の海の底にアゴンがいるんですと松造が教えたので、五郎も大和刑事も驚く。

防衛隊司令部に右京博士は電話をし、日の出岬の海底にアゴンが再び現れました。

防衛隊の第一次出動を要請しますと伝える。

それから当地市民に混乱が起こらぬよう、市当局の避難所にも連絡願いますと依頼する。

原子燃料研究所の電話で新聞社のデスクを呼び出してもらった五郎は、当地で大事件勃発ですと伝える。

いつものように怒鳴って来たデスクに、嫌になっちゃうな…とぼやいた五郎は、濃縮ウラン盗難事件はアゴンに関係があり! それだけじゃないんですよ、良く耳の穴をほじって聞いてくださいよなどと伝えると、もったいぶらずに早くしゃべろ!とデスクに切れられてしまう。

研究所の表に出て来た五郎は、犯人達がアゴンを動かすために濃縮ウランを盗み出したとなると、人質になった子供に危険が降り掛かるとも考えられますね…と大和刑事に話しかける。

もし濃縮ウランと一緒の所に監禁されているとすれば、当然アゴンはそこを狙って現れるだろうからな…と大和刑事も案じ、そばにいた松造も不安そうな顔になる。

町には広報車が走り、市民の皆様、原子怪獣アゴンが現れました。どこか日の出岬の海の底に潜んでいるようでありますが、いつ上陸するか分からない状態であります。

万一の時に備え、いつでも避難できるようにしておかれるようお願い致しますと呼びかける中、それを聞いた市民達は、いつかの新聞に出ていた原子怪獣ですよ!えらいこっちゃ!と騒ぎだす。

その頃、鉄に釣れられ海岸の岩場に連れて来られていた紋太は、おじさん、おらを家に返しておくれよと頼んでいたが、もう少し我慢してなと鉄に言われる。

そこに戻って来た黒田は、ちくしょう、やけに警戒が厳重だな…と腐る。

兄貴、どうしようと鉄が聞くと、慌てるねえ、こいつを海に投げ込みゃ何とかなるさと黒田が答えたので、紋太は驚き、おいらを海に投げ込むのかい?と聞く。 安心しな、こいつの話だよ、鉄は紋太のとなりにおいてあった核燃料の事を指す。

海岸でアゴンの動きを監視していた右京博士の元へやって来た五郎が、博士!何か反応ありませんか?と聞いていた所へ、博士、防衛隊は後方の大地に攻撃の準備を完了しましたと防衛隊員が報告に来る。

本当にアゴンがこの海の中に入るのかしら?とその場にいたさつきが呟くと、間違いである事を祈りたいよと大和刑事も答える。

その時、あれ?アゴンで大騒ぎしているのに、何故船を出してるんだろう?と五郎が沖合を見ながら指摘する。

どこに?とさつきが探していると、ちょっと!と言い残し、五郎はどこかへ行ってしまったので、すっぽんの五郎、又良いネタを掴んだんだなと大和刑事は笑う。

小舟で岩場にたどり着いたのは、トランクを引き上げて来た松造だった。 鉄がトランクを奪い取ると、子供を返してくれ、この通りトランクは持って来たぜと松造が言う。

貴様、アゴンがいるなんて嘘をついていたのか?と黒田が景色ばむと、とんでもねえ、あん時は確かにいたんだと松造は言う。

余計な手間をかけさせやがて!トランクの中、見なかったろうな?と黒田は紋太を捕まえたまま聞く。

見るもんかと松造が答え、子供を返してくれ!と紋太に近づこうとするが、そんな松造を押し倒した黒田は、そうはいかねえ、無事に逃げ出すまでは大事な人質だからなと黒田は言い張る。

鉄と紋太を先に小舟に乗せ、逃げようとした黒田は、追いすがって来る松造を殴りつけていたが、そこに駆けつけて来たのが五郎で、黒田に飛びかかって行く。

それに気付いた紋太は、あっ、お兄ちゃんだ!と喜び、松造も小舟に乗っていた鉄を引き摺り下ろすと殴りつける。

五郎から投げ飛ばされた黒田は腰から拳銃を取り出す。 その手を横合いから掴んでひねり挙げたのは大和刑事だった。

大和さん!と喜んだ五郎だったが、それに笑顔で答えた大和刑事は、海面から顔を出したアゴンを発見する。

松造に殴られていた鉄もアゴンの出現に気付く。

いつの間にか1人小舟に取り残され流されていた紋太が、お父!怖いよ!と助けを求める。

アゴンの近くでは防衛隊が発射した砲弾が爆発していた。

その時、黒田は大和刑事の手を振り払って逃げ出し、松造は海に入り込もうとするので、五郎と大和刑事に止められる。

紋太〜!と絶叫する松造、お父!と叫ぶ紋太の側にはあのトランクが置かれていた。

怖いよ〜!と怯える紋太の小舟をくわえるアゴン。

紋太~!と絶叫する松造を必死に止める五郎と大和刑事。 その様子を見ていた右京博士は、攻撃を中止してください、子供がいますと防衛隊長に頼む。

撃ち方止め!と隊長が指示を出す。 岩場を逃げていた黒田と鉄は、こちらに向かって来る右京博士や防衛隊員達の姿を見て一旦隠れる事にする。

五郎達と合流した右京博士とさつきらは、可哀想だわ、何とか助けてあげなければ…と、小舟ごとアゴンにくわえられた紋太の身を案ずる。

下手な手出しをすれば、飲み込まれてしまう危険があると大和刑事が厳しい表情で指摘する。

落とされても、あの高さでは即死だと右京博士も悩む。 先生、助けてくれ!皆さん、助けてくれ、お願いだ!と松造が取り乱す。

その頃、逃げていた黒田は、おい、トランクを取って来いと鉄に命じたので、兄貴、トランクはアゴンがくわえている船の中だと鉄が教えると、何だって!と黒田も驚く。

業を煮やした五郎は、自衛隊はこのままアゴンを見逃すんですか?と問いかけるので、攻撃すれば子供の命が危ないのだと右京博士が言って聞かす。

戦車でアゴンを殺すのは?既に戦車の出動は命じてありますと隊長が答える。

早く来てくれないかしら!とさつきも焦れる。

ちくしょう、アゴンのお陰で情けない事になっちまったな…と岩場に座り込んでいた鉄がぼやくと、泣き言を並べている暇にアゴンの口から船を落とさせる手を考えるんだと黒田が叱る。

アゴンは小舟をくわえたまま浜に近づいて来る。 紋太〜!しっかりするんだぞ〜!と松造や五郎が叫びかける。

紋太さん〜、頑張るのよ〜!とさつきも呼びかける。

浜に上陸するアゴン(つづくの文字) 逃げる市民達 戦車隊はアゴンの様子を望遠鏡で確認し、待て、アゴンは子供をくわえているぞ、発砲すると命が危ない!と攻撃できないでいた。

アゴンは現在二子山の頂上へ登ったまま、そこから動く気配を見せません。

だが子供の命は何としてでも救わねばなりません。そこで皆さんのお知恵を拝借したいのですと大和刑事が言うと、我々自衛隊としましてもアゴンを攻撃するわけにはいかず、全く手の施し用がありませんと防衛隊隊長も言う。

下手にしかけると子供を飲み込んでしまう恐れがあるし、かと言ってこのまま見ている訳にもいかんし…と右京博士も苦慮する。

現在、子供の状態はどうなんですと集まった記者の1人が大和刑事に聞くと、気を失っているようですと大和刑事は答える。

五郎も、可哀想に、何とか助ける方法はないもんかな…と呟く。

あ、そうだ!ね、こういうのはどうです?ヘリコプターをアゴンの頭の上に飛ばして、縄梯子を使ってそっと救い出すってのはどうですと五郎が提案すると、やる方も命がけですねと防衛隊隊長が言う。

あのアゴンの鼻先に降りて行くのか、正に大冒険だな。死にに行くようなものだよ…と他社の記者達が口々に言い合う。

五郎は、言い出したからには僕がやります、僕にやらせてください!と言い出したので、いや、お気持ちは分かりますが、ヘリコプターから縄梯子で降下する技術は素人が考えるような簡単なものではありません。

しかしせっかく良いアイデアを頂いたんだから、早速関係方面に当たってみましょうと隊長は答える。

アゴンがこんなにでかくなきゃ、くしゃみガスでも使って吐き出させるって手もあるんだけどな…と五郎がぼやくと、くしゃみなんて…とさつきは呆れるが、いや、アゴンだって生き物だ、くしゃみくらいはするよと五郎は真顔で答える。

でも丸ビル以上も高さがあるって言うし、落ちた所で地獄行きじゃあな…と五郎は呟き、何とかヘリコプターで成功させたいねと語りかけると、さつきもきっと成功するわ、だってこんなにみんなが一生懸命に心配してるんですもの、神様だってきっと味方してくださるわとさつきは答える。

アゴンにだって、この気持が通じないはずないと思うのよとさつきが続けると、腕時計で時間を確認した五郎が、空を見上げてそろそろ現れても良い頃なんだけど…と言う。

その直後、ヘリコプターがやって来てアゴンの頭上でホバリングする。

梯子が下ろされ、アゴンがくわえている小舟に近づく。

それを別の場所から見上げていた鉄は、ひでえことになったな、トランクごと自衛隊に持って行かれるんじゃないのかと黒田に話しかけると、馬鹿野郎、自衛隊や警察に渡してたまるか!と黒田は答える。

その時、アゴンが目の前にぶら下がっていた自衛隊ごと梯子を叩き落としたのでヘリコプターも墜落してしまう。

アゴンが暴れだしたのを見た五郎は、しまった!寝てる子を起こしたようなものだと悔やむ。 こちらアゴン対策本部、ただいまアゴンが再び暴れ始めましたと隊長がジープから連絡する。

少年をくわえたまま三重市方向へ向かう模様!従って同方面は厳重な警戒をお願いしますと隊長は伝える。

警報を知らせるサイレンが町中に流れる。

市民達が必死に逃げる。

そんな中、落ち込んだように座り込んだ五郎に、五郎さん、アゴンは三重市に向かっているのよ、追いかけなくて良いの?とさつきが話しかけると、もうその気力はないよと五郎は沈んだ表情で答える。

一体どうしたの?とさつきが近づくと、俺が余計な口出ししたばかりに尊い犠牲者を出してしまったし、アゴンがあんなに大暴れするような事になっちまったんだ。どうしてバカな事してしまったんだろうと五郎が悔やむので、立ち上がったさつきは、五郎さんらしくないわと言うと、君に僕の気持は分からないよと五郎はすねる。

誰だって悪い結果が出ると持って発言する人はいないと思うわ、五郎さんだってそうじゃない。誰もあなたの事責める人はいないと思うの…とさつきが慰めると、俺があんな口出ししなけりゃ、こんな事にはなっていなかったんだ…とまだ五郎は落ち込んでいた。

五郎さん、あなたは良いと思ったからしゃべったんでしょう?それが最善の方法だと思ったから対策本部でも取り上げたんだわ。 あなたは立派よ、結果はどうあれ、何も考えない人よりはずっと立派よとさつきは言い聞かせる。

その言葉に振り向いた五郎は、さつきさん、君は…と呟く。

もっと自信を持つのよ、尊い犠牲者の霊を慰めるためにも、紋太さんのためにももっと良い方法を考えだすのよ。くよくよしている五郎さんなんて全然魅力ないわとさつきは励ます。

そんなさつきに握手を求めた五郎は、ありがとう、やっと僕らしくなったな。でもさつきさんに借りが出来たなと五郎が言うので、まあ五郎さんったらとさつきも微笑み返す。

良ーし、アゴンを追いかけるか!と言いながら五郎は立ち上がる。 アゴンは川に架かる鉄橋を踏みつぶして進行していた。

他社の記者達は、アゴンは桜川を超えましたよ。このまま指をくわえて見ているつもりですか!あそこには製鉄会社の溶鉱炉もガスタンクもあるんですと大和刑事や防衛隊長に詰め寄っていた。

それに対し、まあまあ、皆さんが御心配なさるのも無理はありません。今の状況から判断してアゴンは溶鉱炉を破壊するでしょう。

当然その時は紋太君の命も危ない。

ですから何としてでもアゴンの前進する方向を変えなくちゃならない!と大和刑事が解説し、その点に関しては右京博士からと話を振る。

我々は協議の結果、アゴンが好むウラン物質を使って安全地帯へ誘導する事に決定しましたと右京博士が後を続ける。

どうやって誘導するんです?との記者の問いかけに対しては、ヘリコプターに積み込みアゴンの頭上に飛ばすのですと右京博士は答える。

なるほど、しかしアゴンが子供を飲み込んでからヘリコプターを追いかける事も考えられますが?と別の記者が指摘する。

そうならぬよう、天に祈るより他はありませんと右京博士は言う。

ウラン物質はどこから運んで来るんです?と別の記者が聞くと、東海村の原子力研究所ですと右京博士は答える。

今から間に合いますか?との問いには、既に手配済みですから、もう飛び立っているはずですと博士が言うと、東海村からじゃ時間的にぎりぎりって所だな…と記者が案ずる。

いやあ、間に合うかどうか分からんぞ、ヘリは遅いからな〜と否定的な意見も出る。

アゴンは山を超え、三重県の工業地帯を見渡す。

それに気付いた記者達は、ヘリコプターはどうしたんだ?まさか故障でもしたんじゃないだろうな?と焦っていた。

その時1人の記者が、来て来た、上じゃない下だよと言い、そこに到着したのはさつきを乗せた五郎のオープンカーだった。

毎朝新聞のスッポンか…と片方の記者が言う。

ようよう、いつまでアゴンの尻尾を見物してる気だい?こっちは車が進めなくて困ってるの、退いた退いた!と五郎は道を塞いでいた記者達に声をかける。

これ以上先に行ってみろ、アゴンに踏みつぶされるぞ!と先にいた記者が言うと、バーカ!命が惜しくて新聞記者が勤まるかい!と啖呵を切った五郎は、クラクションを鳴らし強引に記者達を避けると、車を発進させる。

それを見た他社の記者達も車に乗り込み後を追う。 アゴンが接近した工場の工員達が一斉に逃げ出す。

車でその近くまで来た五郎は、あの溶鉱炉を壊したら大変だぜ、アゴンだって火だるまになっちまうと、泊めた車の運転席から身を伸ばす。

可哀想だわ、紋太君が…と助手席に座っていたさつきも心配する。

そこに、右京博士や防衛隊員達が乗った車が到着する。

遅い!と大和刑事が腕時計を見ると、何してるんだろう?と右京博士もヘリの到着の遅れを気にする。

アゴンが溶鉱炉に近づいたので、先生、逃げましょう!と五郎とさつきはさすがにその場にいるのは危険だと察する。

どうしましょう?と大和刑事が右京博士に声をかけた時、一台のヘリコプターが接近して来る。

やって来た!ウランを積んで!と望遠鏡で確認した右京博士が叫ぶ。 オ〜イ!頼むぞ〜!と五郎や大和刑事が手を振る。

アゴンは飛来したヘリコプターに誘われるように進路を変える。

そして山の中腹付近で、くわえていた小舟を山の上に吐き出すと、ヘリを追って行く。

それを見たさつきと五郎は、やった〜!良かったわ〜と互いに抱き合って喜ぶが、あら?五郎さん、あの瞬間撮らなかったの?と聞くと、あ、しまった!と五郎は頭を抑える。

せっかくの劇的瞬間を逃すなんて、まだまだねとさつきがからかと、ちぇっ勝手にしろ!その代わりね、俺はきっと名記事を書いてみせるからねと五郎は約束する。

山の中腹に落とされた小舟に防衛隊員と達と近づいた五郎、大和刑事、さつきらが、おい紋太!と声を掛けると、小舟の外に放り出されていた紋太は抱き起こした大和刑事の腕の中でうっすら目を開ける。

紋太!分かるか?お兄ちゃんだと五郎が呼びかけると、あっ!お兄ちゃん!と紋太は五郎に抱きつく。

一緒に来た右京博士が、このこの父親は?と聞くと、がっかりして家で寝込んでいるそうですと五郎が教える。

大和刑事は防衛隊員にすぐに連絡するように命じる。

紋太の側に落ちていたトランクを開けようとしている様子を近くの林の中から見ていた黒田と鉄は、ちくしょう、アゴンの奴、あんな所にトランクを落ちしやがって…と悔しがる。

このままじゃ、全くどうする事も出来ませんねと鉄やぼやくので、何としても取り戻すんだ。

このまま引き下がる俺様だと思ってやがるのか、必ず取り返してみせるぜと黒田は言う。

その時鉄が、兄貴、又動き出しましたぜと言うと、今に見ておれ、必ず取り返してみせるからな、ただじゃおかないからなと黒田はアゴンを睨みつけると、崖を登ってトランクの側に近づく。

現場では大和刑事が、問題のトランクはこれだなと言い、ええ、東京から来た怪しい男達がこれを取り返そうと必死になっている所を見ると何か犯罪の匂いがしますねと五郎が指摘する。

この辺を怪しい奴らがうろちょろしているかもしれませんから用心してくださいと五郎は、周囲の防衛隊員達に声をかける。

その時、すぐ近くの草むらに身を伏せていた鉄がくしゃみをしそうになったので、慌てて黒田が口を押さえる。

一旦、その場を降りる事に下2人だが、畜生、世話焼かせやがら〜、もう少しで見つかる所だったぜと鉄がぼやくと、馬鹿野郎、お前が変な声を出すからじゃねえか、向こうから回るんだと黒田が別方向を指していた時、鉄が飛んで来るヘリに気付いたので、来い!と鉄に声をかけた黒田はその場から走り出す。

トランクを開けた五郎は、白い粉の入ったビニール袋が大量に入っていたので、何だこりゃ何だ?と困惑し、それを覗き込んでいたさつきも何ですの?と聞く。

少し、粉を嘗めてみた五郎はすぐに吐き出し、麻薬だ!と指摘する。

莫大な量だ、沖の船から密輸入したに違いないと大和刑事が言うので、そうだ!こういう世の中に害毒を流すものはいっそアゴンに食わせれもらえば良いんですよ、ねえそう思いませんか?と五郎が言うので、これだけの麻薬を飲んだアゴンがどう言う反応を示すか興味があるね…と右京博士も乗り気になる。

おそらく死ぬでしょうと大和刑事は断ずる。

ねえ博士、ヘリコプターに積んであるウラン物質はアゴンに退散してもらうために沖で食わしちまうんでしょうと五郎が聞くと、うん、そう云う計画だと右京博士は答える。

ね、これも一緒に食わしてみませんか?と五郎が言い出す。

早速本部に連絡してみようと右京博士も快諾し、私も大賛成ですと大和刑事も言い出す。 その頃、黒田と鉄は動きを止めていたアゴンの尻尾の上に登っていた。

その時、急にアゴンが動き出したので、2人はそのまま尻尾に乗って引きずられて行く。 途中で何とか尻尾から降りた2人。 ヘリは一旦、近くの広場に着陸する。

その操縦士に五郎がトランクを手渡す。 その時、警備の警官の背後の近づいた黒田が警官を背中から差し殺す。

そして、ヘリの前にいた五郎に銃を突きつけ手を挙げさせると、わざわざご苦労だったなとねぎらい、さ、退いてもらおうかと操縦士と五郎をヘリから遠ざけると、鉄と共にヘリに乗り込んで飛び立って行く。

兄貴、ヘリコプターごと頂くとは笑いが止まりませんやと鉄が喜ぶと、どうせ生き残りの俺だ、ヘリくらいじゃもの足りねえよと黒田も満足そうに笑う。

さっきは良くも痛めつけやがって!アゴンが悔しそうに吼えてますぜと、下を見ながら鉄が言うので、一丁からかってやるかと言った黒田は操縦桿を押して下降する。

そして、ヘリからつり下げていた燃料ウランを掴もうとするアゴンをからかうようにヘリを飛ばせると、ざまあ見ろ!悔しかったらここまでおいで!と黒田はからかう。

次の瞬間、アゴンの目の前にやって来たヘリに向かってアゴンは火を吹きかけ、ヘリごと燃料ウランを奪い取ってしまう。

それを見て、操縦士とともにやった、やった!と喜ぶ五郎。

炎上したヘリを放り投げたアゴンの写真を撮りまくる五郎。

アゴンは様子がおかしくなり工業地帯を破壊し始める。

無事、父親の元へ帰された紋太を連れ、海岸にいた五郎、右京博士、大和刑事らに近づいて来た松造は、ありがとうございましたと礼を言う。

良かった…、あれがアゴンの最期です、これであなたの腹の虫も収まったでしょうと海の方を指差しながら五郎が言う。

そして、紋太には、坊や良く見とくんだと海の方を見やる。

海の中に戻って行くアゴンの姿。 それを浜辺から見送る五郎、さつき、大和刑事、右京博士、松造、紋太たちの姿。

はたしアゴンは、このまま海底深くその生命を絶つのであろうか?(とナレーション)

20世紀の科学が原子力を得たために、帰って眠っていたアゴンを蘇らせたように、この御、誰が再びアゴンを生き返らせると言えようか? 我々のアゴンに関する知識はあまりにも少ない。

そして巨大な力を持ったアゴンが、このまま永遠の眠りにつくとは信じがたい。

ただ分かっているのは、科学をもてあそび、人類の得た知識を過信し、悪用するものにアゴンは最後の審判を下すであろう。
 


 

 

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